第14回 勝利の後

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勝利の後

勝利の後は陽気に騒ぐのが一番いい。といっても、試合開始前から身体をアルコールに浸すのだから、BeforeもAfterも関係ない。道路に飛び出して叫んだって、酔っ払って子どもの前で踊ったって、知らない人に抱きついたって大丈夫。サッカーの試合の勝利の後は、ある一線までは無礼講。

ブラジルの国内サッカーリーグである、カンピオナート・ブラジレイロの最終日は、朝から花火が打ち上げられ騒がしい。特に今年は、リオデジャネイロの有力チーム、フラメンゴ優勝の可能性に沸き立ったサポーター達が、朝から集いチームの歌を街中に響かせた。行き交う人々は応援するチームのTシャツで勝利を願い、観戦会場となるバールに旗を吊り下げる。試合開始直前は、まるでW杯でのブラジル選抜の試合の日のように、通りから人影が消える。行き交う車は減り、皆テレビの前でスタンバイするのだ。

最終戦を私が観戦したのは、初戦から通った小さなバール(Bar)。試合開始と同時に歓声が上がり、バールの外まで人があふれだす。手を握り締め、選手の細かな表情まで見過ごすまいとする人もいるが、観戦に集中していない人も結構多い。応援するチームのミスにスラングでわめき散らしている間に、ゴール!飛び上がって喜ぶ大人たちに驚きながらも、まねをして飛び跳ねる子ども達。

今年はフラメンゴが17年ぶり、6度目の王者に返り咲いた。涙を流す人。抱き合う人。飛び上がる人。優勝直後のバールはまるでお祭り騒ぎ。通りかかった車が次々にバールの前に止まり、歓声をあげ、クラクションを鳴らして喜びを共有する。日曜日だというのに、この日は明け方まで騒ぎが続いた。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住9年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種が芽を出してはや6年。わんぱくに成長したわが子に、 読み聞かせ絵本のポルトガル語を直される毎日。ビールを片手に夜の街に出没し、サンバのステップに足を絡ませる日々を過ごす。ブラジルをあそぶブログ