第1回 ハウスシッティングって?

西オーストラリアのパースに住む私たちにとって、東南アジアはとても身近なところ。バリには3時間で行けるし、日本へ一時帰国する途中でマレーシアやシンガポールに寄ることもあるし、最近はとうとうタイのプーケットにコンドミニアムま...
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西オーストラリアのパースに住む私たちにとって、東南アジアはとても身近なところ。バリには3時間で行けるし、日本へ一時帰国する途中でマレーシアやシンガポールに寄ることもあるし、最近はとうとうタイのプーケットにコンドミニアムまで衝動買いしてしまった。

プーケット、カマラビーチのカフェ ココナッツ・ウォーターを飲みながらボーッとするのは至福の時

今回パースから東海岸へと引っ越すことを決めた時、「せっかく仕事をやめるのだし、ついでに荷物を倉庫に入れて、少し長めの旅に出よう」とアジアを選んだのも、「西から東へ大陸移動の合間にちょっと寄り道」という考えからだった。そして、多忙を極めた後に待っていたアジアでのロング・ブレイクは、予想通り素晴らしかった。安くて美味しいものを食べ、マッサージ三昧の日々は至福の時だったのだが、それも5ヶ月を過ぎると、何度も起こる食あたりや日々のアクシデントにも疲れ、心身ともに消耗してくる。

「そろそろオーストラリアに戻ろうか」という話が出だした頃。次なる問題は東オーストラリアのどこを目指すか、ということだった。仕事の都合で引っ越すのでもないので、一体自分たちがどこを目指したらいいのか、土地勘もなく全く分からない。一カ所に落ち着く前に、できればいろんな場所を試してみたい、という私に対し、返って来たパートナーの言葉は、「ハウスシッティングっていう手もあるよ」というものだった。

ハウスシッティングって何? その時の私だけでなく、ほとんどの日本人がそう聞きたくなるだろう。ハウスシッティングが盛んなここオーストラリアでさえも、時々「何それ?」と言われることがあるのだが、ハウスシッターとは家の面倒をみる人。そしてハウスシッティングとは、家主が旅行などで不在の間、シッターがその家に住んで家や庭やペットなどの世話をすることで、金銭は一切介さない。庭や動物の世話のために人を雇わなくていい家主も、ペットホテルに泊まらず自分の家にいられるペットたち(あるいはもっと大きな家畜)も、住む場所を無料で提供してもらえるシッターも、全ての人が得をする素晴らしいシステムだ。

彼の説明を聞いた私は、そいつは素晴らしい!と思わず手を打ち、早速ネットでハウスシッターとして登録できるサイトを発見。AU$60(およそ¥5800)の年間登録料を払い、シッターとして登録をした。そして自分たちのプロフィール写真や仕事歴はもちろんのこと、家のセルフ改築歴(大工仕事のスキル)、馬やヤギや羊を飼っていたこと、パーマカルチャー式の畑を持っていたこと、あげくの果てに「無犯罪証明書」(教員免許とカウンセラー資格に必須なため、二人とも持っている)まで、他人の家に住ませてもらうにあたり、プラスとなりそうなことなら何でも、ここぞとばかりに自分たちのページに書き並べた。更に溺愛中の愛犬も受け入れてもらわなければならないので、彼がどんなに品行方正で、清潔&静かで、他の動物たちと仲良くやっていけるかなど、親バカ丸出しで書き連ね、アップロードした。

ハウスシッティングのサイトに登録した際のプロフィール写真
悪人には見えないでしょ…?

後はただ、私たちのことを見そめてくれる家主から連絡が来るのを待ちつつ、こちらからも家主たちにアプローチするだけ。とりあえず、人気の場所であるクィーンズランド州のサンシャイン・コーストから、ニューサウスウェールズ州のバイロンベイ辺りまでの間に場所を絞り、希望の日程と共に検索エンジンに入れ、数人の家主たちにメッセージを送った。

さて、誰かが私たちを気に入ってくれるのだろうか。まるでお見合い(デート?)サイトに登録したかのようにワクワクしながら、返事を待つばかり……。

香川千穂(かがわちほ)/プロフィール
朝日放送アナウンサー退職後、二年間のハワイ島生活を経て2006年よりオーストラリア在住。執筆のほかにサウンド&アートセラピストとしても活動し、珍しいクォーツ・クリスタルの楽器「アルモニカ」によるサウンド瞑想コンサートを各地で行っている。最近は、趣味と実益を兼ねたダ・ヴィンチNEWS のレビューの仕事をエンジョイ中。