地球丸、10周年だね、ありがとう!

『地球はとっても丸い』が発足してから10年が経ったと、地球丸編集部からのメッセージが届いた。昨秋、2014年11月11日のことだ。
書きたい、伝えたい気持ちを持つ者たちが自発的に行っている地球丸の活動。それを10年も続け...
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『地球はとっても丸い』が発足してから10年が経ったと、地球丸編集部からのメッセージが届いた。昨秋、2014年11月11日のことだ。

書きたい、伝えたい気持ちを持つ者たちが自発的に行っている地球丸の活動。それを10年も続けてきたというその事実に、驚きと喜びが重なり、この秋、私の気持ちは高揚した。なぜなら『地球はとっても丸い』は、私のスペイン生活を支えてくれたひとつの力だからである。

10年前、発足に立ち会ったことがそもそもの縁だった。

当初はグルメ班、子育て班、インテリア班、恋愛結婚班、環境時事班など、女性が興味を持つ話題を設定して班が結成され、各班所属のライターたちが順番に在住国のニュースやエッセイを書き、メルマガとして発行。

私は故郷の山々や相模湾を意図した山上郁海というペンネームで、環境時事班の班長として、『瞳の向こう側』というリレー連載の編集を担当した。

台北の大学院でジャーナリズムを研究し、修士論文を書き終えて間もなかったこともあり、私は環境時事班の班長役を自ら買って出た。フランス語やスペイン語など外国語でインプットした様々な情報を、わかりやすく伝える仕事をしてみたかったのだ。

苔むしたスパニッシュ瓦の波と石畳の細い道を窓から見下ろす古い家の小さな部屋のパソコンに、仕事以外のフォルダが増えた。元気な仲間たちとのメールのやり取りが始まるや、似た境遇のパワフルな女性たちが与えてくれる快感は五臓六腑に染み渡った。海外での悲喜こもごもの体験や想いを、自分の言語で、 明るくユーモアを交えて共有できる朋友たちとの出会いにどれだけ慰められたことか。

環境時事班を1年間続けて班長の役目は返上したが、その後も『地球はとっても丸い』は、依頼された仕事ではなく、自分が書いてみたいことを自由に書かせてもらえる大切な場となった。

たとえば、2007年から翌年にかけて1年間執筆した『宿題を忘れた日』

気ままに書いていたつもりなのに、今読み返すと、写真という仕事への意気込みと、親しい人たちの死が交差する不思議なフォトエッセイになっている。カメラを持ってヨーロッパ中を取材旅行する新しい人生と、日本での幼かった自分が、接点を合わせようとしていたようだ。あの時でないと書けなかった素直な気持ちが書き残されていたことに、感謝の気持ちが湧く。

その2年後、トレドまで一緒に来た連れとの溝が私の中で修復不可能な深さとなった。リレーエッセイ『キスの嵐の中で幸福』では、離別によって得られた開放感と感傷を正直に綴った。おかげで、頭を上げて辛い時期を乗り越えることができた。

それからさらに5年後にあたる昨年から、『スペイン職人物語』を連載させていただいている。近年引き受けていた何冊かのガイドブックでは紹介しきれなかった興味深い工芸品を、ひとりでも多くの人に身近に感じてもらう試みを実現させたかったからだ。しかし職人から聞く話が面白くて、書くことでスペインの歴史にさらにのめり込んでいく。ライフワークになりそうな予感がある。

こう振り返ると、この10年間、その折々、ここに書くことによって人生の舵取をしていたこと気がついた。それは今後も続いていくだろう。

創刊当初は、自分の新しい生き方や仕事も含めていつまで続くのかなとぼんやり思うときもあったが、地球丸編集部と読者の皆さんが支えてくれたおかげで、私たち、倒れなかった。心を込めて、本当にありがとう!

河合妙香(かわいたえこ)/プロフィール
ライター、フォトグファー。ぶんか社『Gina 』の最新号に、赤ちゃんの部屋がキュートなお宅が掲載されます。どうぞお楽しみに! 一方、旅行事業・ビジネス・マッチング の会社「Kimi Planet 」代表(この仕事は本名の 河合妙子で)。スペインで起業し満5年。仕事を通した出会いが本当に面白い。建築家、農家、ワイナリー・オリーブオイル関係者、レストランの経営者やシェフ、ホテル、狩猟家、職人、芸術家と顔ぶれも様々で、毎回、心を打たれる物語が発生。事業を生み出して本当に良かった。
河合妙香HP &フォトギャラリー www.kawaitaeko.com
Kimi Planet・HP  www.kimiplanet.com