第11回 恐怖のゴリラ女、モンガ

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恐怖のゴリラ女、モンガ

ブラジルにはプレイセンターと呼ばれる、移動もしくは常設の遊園地が各地にある。といっても日本のような大型遊園地ではなく、10数個のアトラクションがある程度の小さいものだ。とくに都市部から離れれば離れるほど、その規模は小さくなる。

80年代のモンガは、田舎の遊園地の花形キャラクターだった。19世紀に実在した、見世物小屋で踊っていた極端な多毛症のメキシコ女性がモデルとなっている。身体障がい者などが生活手段のために見世物小屋で働いたり、売り飛ばされたりという話は、世界共通のようだ。この女性をモデルとして創り上げられたのが、「ゴリラ女、モンガ」。美女がゴリラに変身するという恐怖のストーリーは、遊園地の目玉アトラクションだった。今ではローラーコースターなどにその座を奪われてしまったが、モンガはその当時の子ども達をとりこにしたブラジル版キング・コングだったのだ。

美しい女性の姿をしたモンガが、ビキニ姿でダンスを披露する。突然軽やかな音楽が恐怖心をそそる効果音にかわり、ゴリラの皮膚が現れ、鋭い牙が覗き、目が赤く光ったかと思うと照明が落ちる。「皆さん落ち着いてください!」とのアナウンスと共に、再び観客の視界に現れるのは、世にも恐ろしいゴリラ!この時点で走って会場から逃げ出す子どもが大多数で、ゴリラが観客席に向かって歩き出す時には、遊園地中に悲鳴が響き渡る。

6歳になったばかりのわが息子は、ゴリラに変身するまで我慢することができなかった。観客の悲鳴を聞いて、「みなくてよかった」とにっこり。その後気をとりなおして、会場の前のゴリラ人形、モンガを記念撮影。「恐ろしさが伝わってくる」と、ピンボケ写真のできばえに満足したようだ。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住8年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種が芽を出してはや6年。わんぱくに成長したわが子に、 読み聞かせ絵本のポルトガル語を直される毎日。ビールを片手に楽しむ議論はタブーなし。討論好きのブラジル人に混じってスピーチ力、高めてます。ブログ、「VIVAカリオカ!」