第9回 パンツのお姉さんがたくさんいる街

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パンツのお姉さんがたくさんいる街

山の間をうねる、道路沿いに現れる下着メーカーの大きな看板は、ノバ・フリブゴ市に近づいていることを知らせてくれる。赤、黒、ピンク、白。色とりどりの下着を身に着けたモデルが、悩ましげなポーズで目を誘う。街に近づくにつれ看板の量は多くなり、長距離バスターミナルに到着すると、まるで下着姿の美女達に到着を歓迎されているような気分になる。

ノバ・フリブゴ(nova friburgo)は、リオデジャネイロ市から車で約3時間の山間の小さな街だ。スイス、ドイツ移民が興した街で、おいしいチーズとソーセージの他に、避暑地としても知られている。そしてこの小さな街は「ブラジルの下着の街」の名をも持つ。多くの下着メーカーが工場を構え、街中いたるところにあるショップは大量購入割引制度を実施している。

そんなノバ・フリブゴを、5歳になる息子は「パンツのお姉さんがたくさんいる街」と呼ぶ。大量に立ち並ぶ看板は、いやでも誰の目にもとまるのだ。ビーチライフが中心のリオデジャネイロで小さなビキニに見慣れていても、下着姿のモデルを多く拝むことはそうない。民家の屋根、ビルの壁などに横たわる下着姿のセクシーなお姉さんとあってはなおさらだ。

この街にこのような看板があふれるのには、ブラジル人の基本的な身体に対する考え方があると思う。もちろんセクシーさを強調した広告は目を引くという広告戦略もあるだろう。しかし一方でそんなセクシーなモデルが、下着姿で街を飾るのをよしとするブラジル人気質が存在する。身体が健康的であることを常に追求し、自身の身体を愛し、身体を見ることに慣れているブラジル人。下着をまるで洋服のように「普通」に着こなしたモデルの看板は、とっても「普通」のこととしてとらえられているに違いない。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住8年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種が芽を出してはや5年。わんぱくに成長したわが子に、読み聞かせ絵本のポルトガル語を直される毎日。ビールを片手に楽しむ議論はタブーなし。討論好きのブラジル人に混じってスピーチ力、高めてます。ブログ、「VIVAカリオカ!」