第8回 幹に生る果実

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ジャブチカバ

エスティローダーの香水、ビヨンドパラダイスに、ジャブチカバが含まれていることを知ったのは数年前。甘酸っぱい香りから、南国の果実のシルエットを思った。

その後ブラジルで、初めてブドウのような黒光りするジャブチカバを口に含んだ。青空市では、大量につみ重ねられて量り売りされている。買う前に味見をするのは常識。黒い皮から飛びだす甘い白い実を、舌で転がしながら味わった。ライチとブドウを少し甘くしたような味が口の中に広がり、まさにやめられないとまらない。

そして、ブラジルの友人宅の庭で、ジャブチカバの木をはじめて見た時の驚きを今でも覚えている。果実は木の幹や枝に直接生る。ブドウのように垂れ下がるわけでもなく、リンゴのようにへたがあるわけでもない。まるでいぼのように、虫の卵のように「ついている」のだ。

ジャブチカバはブラジル、オリジナルのフルーツだ。大西洋沿岸の森林地帯であるマタ・アトランチカに生息し、小さな農園、もしくは庭での栽培を特徴とする。低い位置から枝分かれしており、子どもたちにとっては木登りが簡単に楽しめる木だ。おばあちゃんの家の庭で、木に上って遊んだ後、お手製のゼリーでティータイム。そんな素朴なブラジルの味でもある。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住8年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種が芽を出してはや5年。わんぱくに成長したわが子に、読み聞かせ絵本のポルトガル語を直される毎日。ビールを片手に楽しむ議論はタブーなし。討論好きのブラジル人に混じってスピーチ力、高めてます。ブログ、「VIVAカリオカ!」