第7回 海水の出入り口

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地域の石畳を、海水が覆う

ブラジルを開拓したペドロ・アルヴァレス・カブラウが「天国に一番近い土地」と呼んだ美しい街、パラチー。リオデジャネイロとサンパウロの中間地点にある港町で、その昔ミナス州で採れた金を、リオデジャネイロへと運ぶ積出港として栄えた。ポルトガル植民地時代をにおわせる石畳にバロック風の教会。歴史的な(環境?)保存地域になっており、そのコロニアルな風情を求め多くの観光客が訪れる。

さてこのパラチーは、2つの川と海に囲まれた、高度約5メートルの水の街でもある。海面が高い日には、「旧市街」と呼ばれる地域の石畳を、海水が覆う。古い街並みが水に映る様はとてもきれいだ。

水が少しひいた街を、水溜りをよけながら歩いた。景観を保つため旧市街では自動車の乗り入れは基本的に禁止されている。でも街外れにくれば、路上駐車する車が目立つようになる。そんなところに、駐車禁止の立て札があった。よくみると「海水出入り口のため駐車禁止」とある。潮が引いた後の道路を、水量が多い方向へと歩いていくと、海水の入り口に行き当たった。

石でできた堤は壊れたのか、それとも堤は取り払われているのか。どちらにしろ、そこから海水が街に流れ込んでいるのだ。海水が浸入しないよう大きな堤を作るのではなく、むしろ自然の原理を受け止めて共存しようとしている。そんなブラジル人らしい一面を見た気がした。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住8年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種は芽を出してはや5年。読み聞かせ絵本のポルトガル語を、息子に直される毎日。ビールを片手に楽しむ議論はタブーなし。討論好きのブラジル人に混じってスピーチ力、高めてます。ブログ、「VIVAカリオカ!」