第5回 海の神にささげる祈り

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海の神にささげる祈り

2月2日、コパカバーナ海岸の砂浜は、花とろうそくで埋め尽くされる。海の女神、イエマンジャに祈りをささげるべく、日が暮れるのを待って大勢の人が訪れるのだ。

イエマンジャはアフリカの土着宗教に起源を持ち、キリスト教などとミックスしたブラジルの民間信仰、カンドンブレの神だ。カンドンブレの神々は、自然現象や色、曜日、などが割り当てられている。イエマンジャは海、母性、守護のシンボル。土曜日の神で、トレードカラーは水色、白、銀色だ。

ろうそくの炎が海風で途切れないよう、砂浜に小さな穴をつくる。広い範囲にわたって、数え切れないほどの小さな穴の中に、ろうそくの光がともる様子はとても感動的だ。照りつける太陽の下、砂浜に寝そべる人々で、埋め尽くされる昼間とは、うって変わった光景だ。

波打ち際で海を見つめ、祈りをささげる。波の中に足を潜らせ、街の雑踏が遠のいた時そっと海に花を供える。誰も投げたりしない。両手でゆっくりと、水にくぐらせて女神に贈り物を渡す。波に引きずられ女神にわたった贈り物は、波に運ばれ砂浜に打ち寄せる。朝日にきらきらと輝き始める砂浜にひっそりと、祈りに答えるかのように生き生きと横たわる。そしてまた、波がやさしく海へとさらっていった。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住7年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種は芽を出してはや4年。読み聞かせ絵本のポルトガル語を、息子に直される毎日。ビールを片手に楽しむ議論はタブーなし。討論好きのブラジル人に混じってスピーチ力、高めてます。ブログ、「VIVAカリオカ!」