第2回 美しい街

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美しい街

晴れた空の上から、じわじわとリオデジャネイロに迫っていくのが好きだ。始めてリオに到着した日も晴れていた。なだらかに広がる海岸になじむ奇峰から迫る、熱い空気に圧倒されたのを覚えている。それは、夢の街に対する憧れでもあり、新しい土地に対する不安でもあった。

道で靴磨きをする子ども達。警察に撃たれ生を終える少年達。明け方に響きわたる銃声。この7年間で、青いベールに包まれた街に潜む、暴力から生み出される哀しみを知った。

それでも、リオデジャネイロは美しい。飛行機で到着するたびに、身を乗り出して下に広がる風景に食らいつく。涙が固まったような色の窓ガラスに、頬をくっつけて、だんだん大きくなる家々を眺める。

青く輝く美しい絵は、飛行機を降りたとたん、現実の色となって私の前に現れる。空港を出てすぐに広がるのは、赤茶色のレンガ造りのスラム街。そして、そこから流れてくるサンバのリズムに、サッカーボールを追い掛け回す子どもたちの姿に口元が緩む。展望を持つことと、自身が流れに加わることを忘れたくないと思う。

≪高橋直子(たかはしなおこ)/プロフィール≫
ブラジル在住7年目のフォトグラファー&ライター。若い情熱に惑わされてブラジルにはまり、まいた種は芽を出してはや4年。読み聞かせ絵本のポルトガル語を、息子に直される毎日。ビールを片手に楽しむ議論はタブーなし。討論好きのブラジル人に混じってスピーチ力、高めてます。ブログ、「VIVAカリオカ!」