216号/プラド夏樹

ニュージーランドのクローディア・真理さんからファンドレイジングに関する記事が届いている。世界はそんなに悪いことばかりではないと、明るい気持ちになった。ひとりひとりの人間は、皆、小さな善意にあふれていて、他人に手をさしのべ...
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ニュージーランドのクローディア・真理さんからファンドレイジングに関する記事が届いている。世界はそんなに悪いことばかりではないと、明るい気持ちになった。ひとりひとりの人間は、皆、小さな善意にあふれていて、他人に手をさしのべることを厭わない世の中になってきているのだ。私が暮らすフランスではまだあまり広がってないシステムだが、それでも、見ず知らずの子どもが手術を受ける、寄付をと頼まれれば、どうだろう? 喜んで応じる人は多いだろう。

しかし、難民受け入れとなると、善意は消え失せるらしい。

今、フランスでは、パリ市長アンヌ・イダルゴ氏が、パリ16区に難民用臨時住居を設置することを発表した。日本でいえば、白金台や田園調布とでもいったところであろうか、ブーローニュ公園のド真ん中である。

住民は超高所得者、時の権力者、財界人々で、「イヤだ」、「他に行ってもらいたい」、「環境が悪くなる」というあからさまな理由で、難民受け入れに対する熾烈な反対運動を起こしている。隣人愛をメッセージとするキリスト教の信者が多い地域であるのにもかかわらず。

私はイダルゴ氏に最後まで意思を貫いてもらいたい。いったいどこまで、私たちは人と分かち合うことができるのか? 私たちの善意の限界はどこなのか?それを見極める良い機会だ。自分のエゴイズムと向きあってはじめて、人間は潔く他人に手をさしのべることができるのだと思う。

(フランス・パリ在住/プラド夏樹)