217号/田中ティナ

先日、地元オーレスキー場で開催された、モーグルのジュニア世界選手権大会を審判員として手伝った。参加資格は14歳から19歳。位置づけとしては、将来世界で活躍するだろうけれど、今のところまだ宝石ほどには輝いていない“原石”選...
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先日、地元オーレスキー場で開催された、モーグルのジュニア世界選手権大会を審判員として手伝った。参加資格は14歳から19歳。位置づけとしては、将来世界で活躍するだろうけれど、今のところまだ宝石ほどには輝いていない“原石”選手のための大会で、ワールドカップのように大掛かりなテレビ制作や賞金もない分、手作り感満載なイベントだ。

たとえば、DJ。DJは選手や観客をのせる音楽をかけ、興味を引くようなトークでつなげ、なおかつ、選手の紹介や得点など競技会運営に必要な情報を臨機応変に放送するという重要な役割で、ワールドカップでは経験豊富なプロが務めている。そのポジションに抜擢されたのが、1月のワールドカップで表彰台に上ったオーレ所属のフィェルストローム選手だった。大会当日、彼は不測の事態にも慌てることなく、若い選手たちのサポート役をやり遂げた。

もちろんスキークラブのお母さんたちも負けてはいない。ゴール付近に設置したグリルを駆使しながら、ジュージューとおいしそうな音と香りで空腹のコーチや観客を誘惑し熱々のハンバーガーを販売する。売上金はコース整備に運用するそうで、お客はただおなかを満たすだけではなく、モーグル競技支援にも一役買えるという一石二鳥の試みだ。

少々の行き違いはあったものの、帰りの車中で、「とても居心地の良い大会だったなぁ」としみじみと思った。なぜか? それはきっと、「大会の主役である選手やモーグル競技そのものを盛り上げたい!」という関係者の前向きなエネルギーがあちこちに感じられたからだ。

スポーツへの情熱をこころに秘めながら、それぞれができることで協力しあって運営する、このような草の根レベルの大会がなければ、ワールドカップもオリンピックも途絶えてしまう。大きな木もしっかりした根っこがなければ、いつか枯れてしまうように。

そして、スポーツを楽しむことができるのも平和があるからこそなのだと、自然災害、戦乱や移民のニュースを耳にするたびに考えている。

(スウェーデン、エステルスンド在住/田中ティナ)