第2回 アイデアいっぱい、支援もいっぱい

ファンドレイジングに協力して寄付すると、「誰かを助けた」という精神的な満足感はあっても、それ以上何も得るものはないと思うかもしれない。人助けは大切なことだが、親切の「持ち出し」ばかりを続けるのは辛いもの。しかし、ニュージ...
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ファンドレイジングに協力して寄付すると、「誰かを助けた」という精神的な満足感はあっても、それ以上何も得るものはないと思うかもしれない。人助けは大切なことだが、親切の「持ち出し」ばかりを続けるのは辛いもの。しかし、ニュージーランドのファンドレイジングには、「双方向性」があって、協力者にも見返りがあることが多い。そのため人々はより好意的に、積極的に支援してくれる。

寄付をしたら、お返しがついてくる

ニュージーランドでファンドレイジングといえばソーセージ・シズル。バーぺキューで焼いたソーセージとタマネギを白いパンに乗せ、トマトソースをかけたものを売るのだ。1個2NZドル(約147円)と買う側にとって手ごろなのが魅力。バーベキューセットは持ち運びできるので、場所を選ばずにファンドレイジングが可能だ。

学校で行われた、心臓血管病の研究や予防のための活動をしているハート・ファウンデーションに寄付を募るために縄跳びを行うイベント、「ジャンプ・ロープ」。
心臓血管病予防には運動が大切というメッセージを子どもに伝える意味もある

次に挙がるのは、ラッフルだろうか。これは簡単にいえばくじ引きで、主催者側が番号のついたチケットを売り、期限が来たらチケットをランダムに選び、当選を決める。チケット1枚の値段はこれまた2NZドル程度。賞品は高級ワインやシャンペン、有名ブランドの化粧品や香水などといった贅沢品が詰めあわされたバスケットということが多い。また時節に合わせたバスケットが用意されることもある。イースターであれば卵型チョコレートなど、クリスマスであればツリーの飾りなどと、そのシーズンを祝うためのグッズが入っている。ラッフルの賞品は、バスケット以外にも、有名選手のサイン入りラグビーシャツ、コンサート・チケット、各種クーポン券といった、ちょっと特別なものであることが特徴だ。中には「無料でタトゥーを入れてもらえる」タトゥーショップのクーポンがあって、びっくりした経験もある。

子どもたちが大好きなファンドレイジングといえば、チョコレート・バー売りだろう。バーがぎっしり詰まった箱を誇らしげに持って、売り歩く。これも1本2NZドルのことが多い。ニュージーランド人はチョコレートに目がないせいで、あっという間に売り切れる。子どもにとっては、どんどん売れるのが、やっていて楽しい理由なのだろう。

花や野菜の種子の販売を通してのファンドレイジング。
ガーデニングが盛んなニュージーランドならではといえるかも

こんな風にものを販売して行うファンドレイジングは一般的で、アイテムも花や野菜などの種子、ワイン、ミートパイ、クッキーなど、バラエティーに富む。名入れや、各人が描いた絵などを転写したパーソナルグッズが売られることもある。

イベント参加が協力につながる

「イベントを催す」のも、ファンドレイジングのひとつの手。その代表といえるのが、学校などで行われるガーラ・デー。校内に屋台村を設け、各家庭から寄付されたホームメイドのお菓子やリサイクル品を売ったり、簡単なゲームを行い、参加者から参加費を得たりする。準備などは大変だが、1年で最も多く収入をあげられるので、大切な催しだ。案を練ったり、屋台でお金のやりとりをしたりと、生徒にとっても社会勉強になる。

ほかにも手洗いで洗車して代金を得るカーウォッシュ、勝者に賞品が用意されているクイズ大会、リサイクル品を集めて販売する大ガレージセール、参加費を集めて行うマラソン大会など、ファンドレイジングを目的としたイベントの種類は数限りない。

また、通常のファンドレイジング・イベントとは少し違うものの、趣旨は同様なのがブック・フェア。出版社が、小学校の校内で書籍を展示し、購入者を募る。生徒が買った本の代金の総合計が750NZドル(約5万5,000円)未満であれば、その10パーセント分、それ以上であれば、その30パーセント分の金額が、学校の書籍購入資金として学校側に還元される。

企業も一般人と一緒になって

ファンドレイジングには物品の販売や、イベントの開催がつきもの。一般人だけで実行するのは難しい。売るための品物やイベント会場の提供など、協力者が欠かせない。そんな時に頼りになるのが企業だ。

ソーセージ・シズルであれば、食肉加工品メーカーに申し込み、ソーセージを無料で提供してもらう。代わりにファンドレイジングの際には、同社のエプロンを着用したり、のぼりを掲げたりすることが条件だ。ソーセージが売れるかどうかは売る場所にかかっている。なので、スーパーマーケットなどの協力を得、人通りの多い入り口付近の軒先を借りたりする。

またチョコレート・バーの場合は、ファンドレイジング用の箱入りのものがすでに企業側で用意されているので、それを注文し、売る。仕入れる際のチョコレートは通常の小売価格より安いので、それに利益を上乗せして販売する。

ラッフルには、地元企業に話を持ちかけ、バウチャーや商品を提供してもらう。必ず協賛してくれた店舗や企業の名前を公表するので、提供側にしてみれば、良い宣伝になる。

ニュージーランドのファンドレイジングは三方向から支えられている――ファンドレイジングを実際運営する人、商品やサービスを提供する企業、そして、それらにお金を出す人。一般人も企業も一緒になって、支援の手を差し伸べる心意気があるのは、うれしいことだ。

クローディアー真理/プロフィール
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。雑誌、ウェブサイトを中心に、文化、子育て・教育、環境、ビジネスといった分野で執筆活動を行う。