234号/西川桂子

私がボランティアをしている介護施設で、よく見かける女性がいる。毎週、土曜日に行われるビンゴの手伝いをしているKさんだ。施設でのビンゴの参加者は8x8マスに数字が並ぶビンゴシートを持ち、司会者が読み上げた数字があればチェッ...
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私がボランティアをしている介護施設で、よく見かける女性がいる。毎週、土曜日に行われるビンゴの手伝いをしているKさんだ。施設でのビンゴの参加者は8x8マスに数字が並ぶビンゴシートを持ち、司会者が読み上げた数字があればチェックする。チェックマークが列に並べば勝ちという単純なゲームだが、思考力がしっかりしている人だと、1ゲームに5枚ほどシートを持ってプレイする。数字が読み上げられるたびに、5枚のシートにその数字がないか探すのは、いかにも良い脳トレになりそうだ。Kさんはそのビンゴのアシスタントをしている。 

名前から推測すると、日系人か日本からの移民なので、ずっと気になっていたが、最近、話をする機会があった。驚いたのはKさんの年齢で、先月、80歳になったばかりだという。このボランティアはビンゴをしている1時間、立ちっぱなしで10人ほどの入居者を手伝うので、体力も必要だ。Kさんは別の介護施設でもボランティアをしているほか、週2回はラテン音楽に合わせてエクササイズをするズンバのクラスにも行っているらしい。

元気なのはKさんだけでない。ボランティア団体でのミーティングに参加すると、積極的に活動している人の多くはリタイアした高齢者で、高齢者が高齢者のお手伝いをしている。85歳の義母も一人暮らしのシニアの通院に付き添うボランティアをしている。

翻って認知症予防にと脳トレにも励んでいた、私の父だが、4年前に認知症と診断が下りた。それからは、あっという間に症状が進んでしまった。80歳を超えて、まだまだ元気なKさんとの違いは何なのか? 敬老の日に父と電話で話をしながら、考え込んでしまった。

(カナダ・バンクーバー在住 西川桂子)