3  高額な契約金は2年後に返還/韓国
ソウルの住宅街。手前には低層住宅、奥には高層住宅がそびえ立っているのが見える。

韓国の家賃制度は独特だ。「チョンセ」と「ウォルセ」の2種類があり、チョンセの場合は、日本円にして数百万~数千万円を入居時に納めることで、月額家賃無料で住むことができる。2年経って契約が切れると、納めた契約金はなんと借主の手元に戻る。大家はどうやって収入を得ているのかというと、この契約金を運用して利益を手にしているのだ。韓国ではこのチョンセ制度が最も一般的ではあるが、最近は利息も下がり、チョンセでは大家の収入が安定しない。そのため、ウォルセと呼ばれる家賃月払い制度のアパートも増えている。

ウォルセでも最初にある程度まとまった額の契約金を支払う。この契約金も、2年の契約満了時には借主に返還される。契約金が大きいほど月額家賃は低くなり、このあたりは大家との交渉も可能だ。

外国人にとっては、韓国でのアパート探しはなかなか困難だ。契約時に多額の現金が手元にない、ローンを組むことが難しいなど、多額の契約金を準備できないケースが多いためだ。ソウルには、契約金を低く抑えたアパートが多く集まる地域があり、外国人居住者の人気を集めている。


2年の契約満了が近づくと、突如、たくさんの人が不動産仲介業者とともにアパートの見学に訪れる。大家が契約金を返却するには、次の借主を早く決めて契約金を手に入れなくてはならないためだ。この契約金のバトンリレーがうまくつながらないと、契約金が返ってこない場合もある。中には、大家が投資や運用に失敗してしまい、裁判にまで発展してしまうこともあるという。

日本では「立つ鳥、跡を濁さず」と言うが、韓国ではその逆で、引越しの際は散らかしたまま出て行くことが縁起がいいとされている。また、契約満了の2年ごとに引越しを重ねる人が多く、引越し業者も手馴れたもので、搬出も搬入もあっという間だ。エレベーターのついたハシゴのような機械を使って、高層階の引越しをする様子は圧巻だ。

御供理恵/プロフィール
2008年から2年間、韓国在住。ソウルでの部屋探しは、夫の勤務先が全面バックアップしてくれたためスムーズだったが、大家に提示した入居条件は「壁紙全面張替」。韓国人のインテリアセンスは日本人にとってはあまりも派手すぎ、壁に染み付いた食べ物の臭いに北欧人の夫は辟易。新しい壁紙は、壁紙屋さんの反対を押し切り、アイボリーの無地を選択した。現在はノルウェー在住。ウェブサイト「Arctic Rainbow」