205号/原田慶子

春うらら。日本が最も美しい季節に一時帰国した。懐かしい人々と美味しい食事、物事は何もかもスムーズだし、いろんなことが快適だ。一方で、さまざまなことに違和感を覚えた。特に気になったのが日本語だ。

コンビニやスーパーでよく耳にするいわゆる「バイト敬語」「ファミコン言葉」は、以前にも増してその勢力範囲を広げたようだ。ネット上には「『1000円からお預かりします』の“から”は間違い」といった情報も溢れているのに、なぜここまで定着してしまっているのだろう。私がおかしいと思っているだけで、実はすでに市民権を得てしまっているのだろうか?

百貨店店員の「お」の乱発には、さらに驚いてしまった。某百貨店の下着売り場でブラジャーを試着した時など、店員の言葉が気になって商品選びどころではない。「お胸をお上げ致します」「お感じはおよろしいでしょうか?」「こちらだと、お胸がとってもおきれいに収まっていらっしゃいますね」などなど、言われる度に鳥肌が立つ。「なぜそんな日本語を話すのか?マニュアルにそう書いてあるのか?それとも先輩からの口伝?そう言わないと、お客様は怒るのか?」と質問したくて堪らない。

言語はその国の文化を映す鏡だ。時代を反映し、さまざまに変化していく。今回の一時帰国ではいろんな人に出会ったが、その多くが「今の日本は病んでいる」と訴えていた。病の捉え方はさまざまだが、そうした事象が現代の日本語に影響を与えているとしたら……。だから、なぜ「1000円お預かりします」と普通に言えないのか、何にでも「お」を付ければ良しといった奇妙な風潮はどこからきているのか、考えてみる必要があるのではないだろうか。

(ペルー・リマ在住 原田慶子)