272号/プラド夏樹

地球丸の毎月更新を休むことが決まった。16年間も定期更新を続けてきて今年は17年目になるそうだ。長い歳月があっという間に過ぎてしまったことに今更ながら驚くばかりだ。

個人的なことになるが、「海外在住メディア広場」に登録した当時、「何か書いてみたい」という漠然とした思いに悶々としていたものの、外国暮らしも長く日本語はさっぱり忘れていた。それなのに日記を書くだけでは飽き足らず、誰かが読んでくれるものを書きたいと思っていたのだ。つまり、読者とのつながりを探していた。

その後、メルマガ「地球はとっても丸い」編集部員求人というお知らせを受け、全く素人なのにもかかわらず図々しく応募した。編集部に送られてきた原稿をみんなで読み、気づいたことをメールでやりとりし、時に雑談する。それが毎月のリズムになっていった。私自身も、連載を何度か書き、メンバーに校正してもらった。それは2年前に出版した拙著『フランス人の性』(光文社新書)の一部になった。書きたくてウズウズしていた時に「地球はとっても丸い」に出会ったからこそ「書く場所がない」という状態から脱出し、今では定期的にギャラをもらって書けるようになった。そして今年1月には「海外在住メディア広場」の仲間との共著本『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)が出版された。

編集部メンバーの皆さんには大変お世話になった。お互いに心配事を話し合ったり、励ましあえたことがどれだけ私を救ったことかわからない。でもそれだけではない、寄稿して下さった人々の原稿を読みながら、知らない単語や言い回し、新しい日本語を学び、そして世界の様々な国で起きている出来事のリアルな息吹を感じることができた。毎月のこうしたリズムがなくなることは、私にはポッカリ心に穴が空いたようなものである。しかし、同時に新しいことのスタートにつながるかもしれないと信じたい。

これまで寄稿してくださった方々、読者の皆さん、本当にどうもありがとうございました。

 

   (フランス・パリ在住 プラド夏樹)