第17回 帰国して間もなく3年

息子と二人で日本に帰国してから、間もなく3年になる。

フランスを離れて日本に戻ったこと自体は、後悔していないが、「こんなはずじゃなかった」と思う日々である。

このコラムにも書いたが、帰国後しばらくして、更年期鬱と帰国鬱のダブルパンチに見舞われた。

その後、自分のキャリアが活かせる仕事の契約が取れて、運が向いて来た、と喜んでいた矢先にコロナである。仕事を失い、不安感から眠れなくなり、何ごとに対してもやる気が起こらなくなり、世に言うコロナ鬱になった。今も時々不安の発作に襲われ、気持ちの浮き沈みが激しい。

ただ、そもそもの帰国の理由・目的に限って言えば、まずまずクリアしている。

まずは、息子の療育。発達障害児を受け入れる高校に息子は問題を起こすこともなく淡々と通い、将来進む道も決めて、そのためのスキルを学べる専門学校に合格した。

年老いた両親のサポートについては、幸い施設に入所しているので、介護をする必要はないが、コロナ前は毎週末息子と面会に行き、買い物に連れ出したり、病院への付き添いをしたり、とフランスに住み続けていれば不可能だった“親孝行もどき”ができた。

そしてゴミ屋敷と化した実家の断捨離。住み始めた当初は6LDKの一軒家全体が物置のような状態で、押入れ、クローゼットから戸棚、本棚まで収納スペースには物がぎっしりと詰め込まれ、そこに入りきらないものを入れたダンボール、雑誌などが床に積まれていたのだ。ゴミをひたすら分別し、ご近所に恥ずかしいほどの量のゴミ袋を、毎朝収集所まで運ぶ日が続いた。また、業者に頼んでカビだらけのトイレの壁紙を剥がしてもらったり、底に穴の空いたシステムキッチンを付け替えたりの最低限のリフォームをして、数カ月後に何とか“人が住める”状態になった。その後も少しずつ本、衣類、食器など不用品を処分して行き、今では断捨離も最終段階に入っている。

やるべき最低限のことはこなしているのだから、それでよし、としよう。

 

江草由香(えぐさゆか)/プロフィール
編集者・ライター・通訳・翻訳者・イベントコーディネーター。
立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。フランスでPRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発フリーペーパー『Bisouビズ』を創刊。現在パリ・フランスとアート&モノづくりをテーマにしたサイト『BisouFranceビズ・フランス』の編集長。個人ブログは『湘南二宮時々パリ』