9 バリアフリーを体感しよう/ドイツ

老人ホームでも、手押し車で。座って一休みするお年寄り

ドイツでは、バリアフリーがそこかしこで広がっている。ひとりですいすい動き回る車椅子の人を日常的に見かけるし、車椅子専用のジョギンググループもあるほどだ。私の住む北ドイツのハノーバーでも、路面電車の駅は高床の工事が進み、地下鉄の入り口もスロープかエレベーターがついている。バスは乗車のさい車体が傾きスロープが出るので、車椅子もベビーカーも乗りやすい。

動きが少し不自由になったお年寄りは歩行補助器で外出する。すぐ手前は布が張ってあり、それが即席の椅子となる。籠もついており、買い物に便利だ。杖代わりになり、荷物入れにもなり、疲れたらすぐ座ることができるからひとりで外出しやすい。この車のおかげで、自立行動範囲がずいぶん広まったといわれる。これも、バリアフリーの環境が整っているから可能である。

車椅子を体験

ある福祉団体では、車椅子を使ったり、目隠しをして杖だけで歩くなど、障害による不便さを体験できる講座を開いている。砂利道や石畳、6%と10%の傾斜などがあり、実際にやってみるとずいぶん大変なことがわかる。2センチの段差でも、こつがいる。いつもは何気なく見ている車椅子だが、体験して初めて使う人の立場を理解することができる。この講座のコンセプトをつくったひとりマルクス・シェーンは「障がいのある人とない人が、理解しあうことが必要。垣根をなくし、気軽に交流してほしい」と話している。

バリアフリーの世の中は、弱者にやさしい世界だから、誰にとっても住みやすいはず。いくつになっても自分らしい生活ができる社会となってほしい。

田口理穂/プロフィール
ジャーナリスト、ドイツ語通訳。1996年よりドイツ在住。
2012年8月に出版した「市民がつくった電力会社 ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命」(大月書店)が、おかげさまで増刷となりました。チェルノブイリをきっかけにした反原発運動から、自然エネルギー供給会社に発展したシェーナウ電力会社について書いたもの。ご覧いただければ幸いです。http://www.otsukishoten.co.jp/book/b103037.html