191号/田中ティナ

今月、拙宅では夫がスノーボードのジャッジとしてソチに出かけたのでわたしは札幌へ。友人たちとテレビ観戦しながら各国選手の活躍に一喜一憂する寝不足の中、ニシンの刺身梅ドレッシング和えをおつまみに本場のビールでのどを潤しながら考えた。

モーグル競技では、バンクーバーオリンピック、男女の金メダリストたちが連覇をかけて戦った。プレッシャーは相当だったと想像するが、そんな中、集中力と研ぎ澄まし、迫力満点のランを決めたビロドーがフリースタイルスキー史上初のオリンピック連覇を達成。一方カーニーは細かいミスがあり、メダルは獲得したものの大会翌日に彼女が発信したメッセージには、「銅メダルはブロークンハートみたい」とあった。

元トップアスリートの方が言われたそうだ。「オリンピックに出られるか、出られないか。オリピックに出ることができたら、8位以内に入賞するかしないか。入賞でもメダルが取れるか取れないか。メダル獲得もその色によってまわりの評価に格段の差があるのです」と。

努力を積み重ねてメダルを獲得することはすばらしい結果であり、獲得順位によって客観的評価に差が生まれるのは事実ではある。ただ、「メダリスト以外は敗者なの?」と問われれば「NO!」と断言できる。人生いいときもあれば悪いときもある。

トリノオリンピック、本命視されながらも怪我で出場を断念したフィギュアスケートのクワン選手の言葉も忘れられない。「夢をかなえるのがスポーツならば、かなわないのもまたスポーツ。でもいちばん大事なことは夢に向かって最大限の努力をすることがスポーツなのです」

モーグルの上村選手やフィギュアスケートの浅田選手のように自分の目標に向かって努力し続け、納得の演技ができたときのすがすがしい笑顔には心を揺さぶられ、うれし涙が止まらなかった。また、スノーボードPGSで銀メダルを獲得した竹内選手は「これからも人として成長していきたい」、とインタビューを締めくくった。

スポーツを通して人として成長し、凛としたたたずまいを見せてくれる選手たち。メダルの向こうにある、もっと大切なことを挑戦者たちが教えてくれたソチオリンピック。選手、チーム、役員、そして応援団、よくがんばったみんなに「ありがとう!!」と伝えたい。

(スウェーデン、エステルスンド在住/田中ティナ)