第9回:ポロ ― پولو ― 中国(新疆ウイグル自治区)

ポロ ― پولو ― 中国(新疆ウイグル自治区)

新疆と呼ばれる中国西北部、シルクロード沿いの地域には多数の民族が暮らし、料理もまた中国料理という括りに入らないものもたくさんある。この辺りには、トマトやニンニクをたっぷり使う麺料理など、まるでイタリアンのような料理もあって、なかなか興味深い。

そのひとつが、ウイグル料理。とはいえ、そう聞いてもどんな料理なのかさっぱり見当もつかない……という人のほうが多いはず。まず、大きな特徴として、ウイグル族はそのほとんどがムスリム=回教徒なので、中国語で清真(チンジェン)と呼ばれるイスラム法上許された食べ物、調理法のものしか口にしないということ。ここでは詳しくは触れないけど、日本人にも知られることといえば、豚肉は食べない! ってことかな。

地域的に、主食系では小麦粉を使う料理が多いものの、米料理もある。ポロと呼ばれるウイグル風のピラフがその代表格で、大雑把に言えば、肉と野菜の炊き込みごはん。肉は豚肉以外ならいろいろ使われるらしいけど、基本的には羊肉がポピュラー。野菜はタマネギとニンジン。そして調味料は塩だけ、といたってシンプルな料理だけど、いや、だからこそかな……とても滋味あふれる味わい。本場のものは黄色とオレンジの2色のニンジンを使う。

今は広く一般的に食べられているけれど、かつては日本の赤飯のようなお祝い料理だったらしい。そういうごちそうのときは、レーズンを加えるのだと現地のヒトから聞いたことがあるけど、飲食店で食べる場合はほぼレーズン入り。やっぱり高級感を演出しているのかな? そして、たいていヨーグルトが添えられる。日本のプレーンヨーグルトよりは固形分が少なくやわらかい感じ。これを好みでポロにかけて食べたり、箸休め的に合間に食べたりする。

さて、東京で本格的なポロを食べたいと思ったら、西新宿にあるシルクロード・タリムへ! ちょっとわかりにくい場所にあり、うっかり新宿から歩いたらえらく時間がかかってしまったが、参宮橋や初台の駅からならそう遠くない。おそらく、2014年3月現在、東京都内でウイグル料理を専門に出す店は……店のサイトにも書かれているとおり、ここだけと思われる。以前は都内に2件あり、いずれもおいしかったけど、残念ながら閉店してしまったようだ。

私が店を訪れた当日も、多くのウイグル人のゲストでいっぱいだったことからも、本場の味が楽しめることがうかがえる。ポロもちゃんと2色のニンジンとレーズン入り。ただ、肉は食べやすく細かくなっているところがちょっとよそゆきの顔かな。本場では骨付きの塊がゴロンゴロン乗っかってるだけのコトも多いので。

ほかにもウイグル料理の代表的メニューがいろいろ揃っているので、ちょっといつもと一味違うエキゾチックな料理が食べたいときにぜひ!

◆シルクロード・タリム ウイグルレストラン


凛 福子(りん ふくこ)/プロフィール
東京在住。日本とアジアを中心に世界各地を、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。今月は久々にプライベートでハワイでの休日……というか、食い倒れの旅を満喫してきました。3月中旬を過ぎても寒い日が多かった東京もようやく春めいて、暖かい地方からはようやく桜の便りが届くように。桜も大好きなんだけど、やっぱり花より団子かなぁ~