194号/河野友見

5月ももう終わりというのに、我が家ではいまだに鯉のぼりが飾られている。と言ってもマンション住まいでバルコニーには飾ることができないので、鯉のぼりは高い空を見上げて風に泳いでいるわけではなく、リビングのピクチャーレールに干物のように干されているのだが。父鯉、母鯉、子鯉の3匹は義母が贈ってくれたもので、一軒家の庭に飾ってもいいくらいの大きさなので、現在でかい鯉が3匹も吊るされたリビングにいると、なんだか圧迫感を感じる。

では、なぜ鯉のぼりを降ろさないのかと言うと、理由はふたつある。ひとつは、ずぼらな私が単に片づけるのが面倒だということ。なにせ、4月の終わりごろに「あ! 節句の飾り忘れてた!」と大慌てで出したので、こどもの日が終わった途端に片づけるのが、今になって勿体ないのである。そしてもうひとつは、まさかのまさかの……広島カープの首位転落を阻止するため。大笑いされるかもしれないが、プロ野球ファンの間では「鯉のぼりの季節が終わるとカープの勢いは失速する」というジンクスが存在する。ただのジンクスだと思えばいいのだが、実際に鯉のぼりの季節が終わるとカープが負けに負けて今年も5位で終了、ということは実はよくあるのだ。

しかし、昨年久々のAクラス入りを果たしたカープは、今年絶好調。単独首位を走るなどというにわかには信じがたいランキング表が現実のものとなっている。いや、これで優勝間違いなしなんてことまでは思っていない、ただ、もうちょっとこの夢を見ていたい……というささやかな希望が、鯉のぼりを降ろさせないのだ。

とは言え、鯉のぼりと一緒に片づけるはずの、いかついお面の伊達政宗の五月人形もいまだに飾られている。伊達さんはカープには何も関係がないので、こちらもまだ飾られているということは、やはり私のずぼらが一番の大きな理由なのだろう。

(日本・広島在住 河野友見)