第19回 ダメな国の法則

インド・ムンバイの路上本屋

空港に着陸するときに滑走路のわきにうっちゃってある古い飛行機が見えたら、ようこそダメな国へ! スクラップが堂々と空の玄関口の目立つところに捨ててあるなら、そこはダメな国だと思ってまず間違いない。これが到着時にチェックできる項目その1だ。

そのように自分なりに編み出したダメな国チェックリストがある。町を散策しながら、いくつ当てはまるか観察していくのだ。当てはまる項目が多ければ多いほどダメ度が高い。

項目その2、コピー屋が多い。本がまだ貴重品なのでコピーですませようとするからだ。コピー機が何台かあり、専属のスタッフがいるようなコピー専門店である。頼めば製本までしてくれることもある。ダメな国では著作権などあってないようなものだ。

項目その3、薬屋が多い。診療代が高くておいそれとは医者にかかれないので、薬でなんとか治そうとするからだ。“BUY 1 GET 1”でサプリメントを安く売っている国では、予防としてそれらが飲まれている。具体的にどこかと言えばアメリカである。先進国だからといってダメでないわけではない。

項目その4、質屋が多い。これに至ってはもはや説明不要だろう。消費者金融が多いというのもこの項目に入れてもいいかもしれない。国自体が借金まみれなら、その国民が借金まみれであっても仕方がない。この国にしてこの国民ありだ。

項目その5、宝くじ屋が多い。パチンコ屋が多いとか、しょっちゅう闘鶏(立派な賭博である)をやっているとかも、射幸心という意味ではこの項目に盛りこんでもよいだろう。一攫千金というよりも、「働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり ちょっとくじ買う」なので、よけいに悲哀が漂う。

項目その6、ビールもしくはワインがべらぼうに安い。国によっては水よりもガソリンよりも安いこともある。そんな国では真っ昼間から酔っ払っていてもさほど罪悪感はない。「これが酔わずにいられるか!」という民意が安酒の値段に反映されているのだ。

幸いにして6項目すべてに当てはまる国にはまだ行ったことがない。逆にイケてる国には、本屋と花屋とカフェが多い。近頃はどこでも世界的なチェーン店ばかりが軒を連ねて、都市はどこも代わりばえしなくなってきた。グローバリゼーションというやつである。

片岡恭子(かたおか・きょうこ)/プロフィール
1968年京都府生まれ。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒。同大文学研究科修士課程修了。同大図書館司書として勤めた後、スペインのコンプルテンセ大学に留学。中南米を3年に渡って放浪。ベネズエラで不法労働中、民放テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHKラジオ番組にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行誌に連載。蔵前仁一氏が主宰する『旅行人』に寄稿。新宿ネイキッドロフトで主催する旅イベント「旅人の夜」が7年目を迎える。ロックバンド、神聖かまってちゃんの大ファン。2015年現在、47カ国を歴訪。処女作『棄国子女-転がる石という生き方』(春秋社)絶賛発売中!

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