236号/河野友見

秋は忙しい。一年じゅう忙しい気もするが、この時期は特に忙しく師走がすぐにやって来る、という焦りがある。
夏休み明けの9月、幼稚園では運動会の練習が始まり、息子は毎日体操服や靴を泥まみれにして帰ってきていた。幼稚園からは「...
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秋は忙しい。一年じゅう忙しい気もするが、この時期は特に忙しく師走がすぐにやって来る、という焦りがある。

夏休み明けの9月、幼稚園では運動会の練習が始まり、息子は毎日体操服や靴を泥まみれにして帰ってきていた。幼稚園からは「冷却タオルを持ってくること」「リハーサル日は体操服で8時半までに登園すること」などの指示が増え、日々洗濯と持ち物の確認に追われた。

一方、同じ時期、母たちは運動会の翌週にあるバザーのため、クラスごとの集会や作業でバザー委員に呼び出されていた。遊休品のクラス、食品販売のクラス、そしてハンドメイド品販売のクラス。息子のクラスはゲームが担当だったので、クラスメイトの母たちとともに各ゲームコーナーや景品の準備にあたった。

運動会は毎年10月2週目の土曜日だが、今年の秋はどうしたことか、10月は週末に限って雨、雨、雨。運動会当日も子どもたちの演技中に雷鳴が轟き、豪雨となって、まさかの中止に。翌日曜日に途中で終わった演目から再開することになった。帰宅して泥まみれの体操服を急いで洗濯して明日までに乾かさなくてはならない。園規定の運動靴ももちろんびしょ濡れなので、新聞紙をぎゅうぎゅうに靴に詰め込んで「明日までに乾きますように」と祈る。「先生、こんなの運動会の予定に入ってません!」と思いながら、祈る。結局、翌朝までに靴は乾かなかったので、ドライヤーで乾かした。

良い場所取りのために朝早くから親が並ぶというのは運動会の風物詩でもあるが、2日連続で早朝5時から並んだママ友は、「眠い、眠い」としきりにぼやいていた。親も子もグッタリになったが、ある意味忘れられない運動会になったとも言えよう。余談だが、幼稚園の創立以来約60年の歴史の中で、2日連続運動会は今年が初めてだったという。

さて、運動会が終わり、気合いを再度入れ直した。次はバザー本番だ。実はこの頃、仕事もかなり忙しくて、体調も崩し気味だった上に風邪もひきかけていた私は、絶対にバザーが終わるまでは倒れるまいと、毎日タウリン3000mgの栄養ドリンクや葛根湯、風邪薬を身体に取り込みながら、とにかく気合いだ! 元気があれば何でもできる! 元気ですかー! と自らの頰をビンタしながら自身を鼓舞し、気力で乗り切っていた。

バザーは結果的に言うと、無事終わった。ゲームは大盛況で、多くの子どもたちの笑顔が見られてよかった。

しかし、私の担当したクジ引きは子どもがひっきりなしに並んで大忙しなのに係りの人数がたったの4人しかいなかったため、とても大変だった。飲み物を口にするヒマさえなく、目が回る忙しさ。私は屈んで子どもからゲームチケットを受け取り、中腰でクジの紐を引っ張らせ、景品の番号を叫ぶという作業を2時間ぶっ通しで250人以上の子どもたち相手にやったのだが、屈伸運動をしながら「25番! おめでとう!」「90番! 大当たり〜!」などと声を出していたため、2時間で喉が潰れ、終わった直後には足が痙攣してまっすぐ立てないほどだった。

バザーの片付け後、帰宅してから私は3時間以上寝た。その日の夜もぐっすり休んだおかげか、喉以外の体調はさほど悪化もせず助かった。

運動会もバザーも終わった、お疲れ様! とクラスやママ友グループでお疲れ様ランチ会があり、やっと終わったね〜と喜んでいたのだが、すっかり忘れていた。私は幼稚園のベルマーク委員をやっている。よりによって2年連続部長である。ベルマーク委員の本番は年末。1年間集めてきたベルマーク数千枚の点数を計算し、ベルマーク財団に発送するという、気の遠くなる作業はこれから始まるのである。とりあえず、気力を保つために栄養ドリンクと葛根湯の準備は終わらせた。あとは気合いだ。元気ですかー!

私の師走は夏の終わりにすでに始まっていたのかもしれない。

(日本・広島在住 河野友見)