242号/西川桂子

カナダで旧日本軍が1937年に南京を占領した12月13日を「南京大虐殺記念日」と定めようという動きがある。5月17日にはバンクーバー市選出のカナダ連邦国会議員、ジェニー・クワン氏が、「南京大虐殺記念日」制定の署名運動を始めた。

同様の活動は、カナダ最大の都市トロントや首都オタワがあるオンタリオ州などでも既に開始していた。昨秋、オンタリオ州とマニトバ州の州議会に記念日制定の動議が出たというニュースにどんよりした気分になっていたところを、今度は自分が暮らす街で選出された国会議員が署名を集めているという。なぜ、カナダで「南京大虐殺記念日」を定めるのか、私には分からない。

クワン氏の請願書を要約すると、「大虐殺が非人道的であり、また南京では多数の女性が旧日本軍から暴行を受けたことから、人権擁護の国、カナダとして記念日を設けて欲しい」ということだ。この署名運動を受けて、今度はバンクーバーの日系カナダ人社会で記念日制定を反対する活動も始まった。日系移民と中国系移民の関係がピリピリしそうな予感がする。

正直なところ、「南京大虐殺記念日」を作るなら、「アウシュビッツ解放記念日」、「原爆投下記念日」、「ルワンダ虐殺記念日」なども作るべきではないかと思う。あるいは、第二次世界大戦中の日系カナダ人の強制収容や財産没収に関する記念日や先住民迫害の歴史に関する記念日から始めるべきではないのか。日系人や先住民差別や迫害については、カナダは国として謝罪もしている。

多文化主義を謳うカナダは移民の国だ。様々なバックグラウンドを持つ人たちが、仲良く暮らしていけたらいいな。ただそれだけを願う。

(カナダ・バンクーバー在住 西川桂子)