179号/スプリスガルト友美

2月は日本では梅の季節。私の住むポーランドでは、日本のような梅の花は見られないが、毎年この時期になると祖母のことを思い出す。

祖母は明治最後の年の3月2日に生まれた。梅の季節だったことから、「ウメノ」と名づけられたという。いつも背筋をピンと伸ばして、梅のように凛とした美しさを持った祖母だった。祖母は折に触れ、花が咲き乱れる暖かい季節に天に召されたい、と口ぐせのようにいっていた。そんな願いが神様に届いたのか、5年前の3月12日、梅の花の香る中98歳で眠るようにその生涯を閉じた。

祖母が亡くなった後、遺品整理をしていた母から、私宛ての小さな包みを受け取った。中から出てきたのはペンケース。添えてあったメモには「文筆にたずさわる友美へ」とあった。それを見て思わず涙があふれ、止まらなかった。小さい頃から書くのが好きで、暇さえあれば詩や物語を書いていた私が、実際に“物書き”の仕事をするようになったことをこんなにも誇りに思っていてくれたなんて。

毎月「地球はとっても丸い」に掲載される、世界各国から寄せられる文章を読んでいると、書くことに対する熱い思いがあふれてくるようで、圧倒されてしまうこともしばしばだ。

祖母が好きでいてくれた私の文章は、読者の目にはどのように映っているのだろうか。祖母の期待を裏切らないような文章を、これからも書き続けていきたい。

(ポーランド・ポズナン在住 スプリスガルト友美)