165号/プラド夏樹

2011年は、日本にとってのみならず、世界にとって激動の年だったと思う。

震災後の反原発運動、アラブの春、「ウォール街を占拠せよ」運動をはじめとした各国での占拠運動。共通項としてあるのは、一般市民が権力に対して堂々と異議を唱えるようになったことだ。

1年前、チュニジアでモハメッド・ブアジジという青年が街頭で野菜を荷台に積んで販売していたところ、不法であると商品を取り上げられ、警官から暴行を受けた。それに抗議してブアジジ氏は焼身自殺をし、この悲劇をきっかけにチュニジアでは市民革命が起きた。独裁者ベン・アリ前大統領を追放するに至ったアラブの春のきっかけは、失業して野菜を売って日銭を稼いでいた一青年の絶望的な怒りだった。

怒りをバネにして政治に参加しようという「怒れ!憤れ!」というステファン・エセル氏の本が世界中でベストセラーになっている。ナチスに占領されたフランスで対独レジスタンス運動に身を投じた経験をもつ人で、93歳という高齢にもかかわらず、世界中の若者たちのオピニオンリーダーとなり、アラブの春や各国の占拠運動の参加者たちにも愛読された。村井章子訳で日経BP社から日本語版が出版されていると聞いた。一般市民の「怒り」が世界を動かしつつある今、一読をお勧めしたい。