第1回 大麻合法化も問題山積のカナダ

カナダ最西端の島、バンクーバー島。島といっても、総面積は32.134平方キロメートルで九州よりやや大きく、北米西海岸では最大の島である。国際都市バンクーバーからはフェリーだと1時間半、飛行機ではバンクーバー国際空港から25分ほどの距離だ。私はこの島のほぼ最南端にあるビクトリアに住んで20年になる。カナダ人との結婚、離婚、アメリカ人との再婚を経て、子育てをしながら、留学エージェント、ビジネスコンサルタント、ライターなど様々な活動をしている。これから「バンクーバー島便り」というタイトルで、私の住むカナダ西海岸の生活の様子をお届けできたらと思う。

カナダというと、北米でも北に位置するため、全体的に寒い国というイメージがあると思うが、バンクーバー島はカナダでも温暖な気候で知られ、冬は最低でもマイナス2〜3℃、夏は最高でも30℃程度と過ごしやすく、自然を愛する人、健康に気を遣う人が多いことで知られている。

最近、カナダでよく話題となるのは、昨年2018年10月17日より使用が合法化された大麻である。成人ならタバコやアルコール同様に嗜好品として使用することが可能になった。覚醒剤やその他のドラッグと比べると、健康への悪影響は低く、厳しく取り締まるよりは政府が管理したほうが合理的、かつ税収を見込むことができるというのが合法化の主な理由だ。

調べてみると、カナダでは大麻の使用は1923年に違法になっている。吸うことはもちろん、所持も売買も長い間禁止だったはずなのに、街を歩いていても、独特の匂いが漂ってくるので、誰かが吸っているとすぐにわかった。つまり違法時代から人々は大麻を楽しんでいたのだ。私の個人的な印象としては、バンクーバー島では合法化以前から大麻使用に寛容どころか、「大麻は健康に良い」と信じている人達も多いと感じている。

大麻のことはほとんど何も知らなかった私だが、2011年にカナダで医療目的の大麻の使用が合法化された際、大麻が痛みの緩和や不眠治療などに非常に効果のあるものだということを知った。この合法化に伴い、ビクトリアには大麻を販売する店(ディスペンサリー)があちこちにオープンした。ディスペンサリーができる以前、使用者が具体的にどこで大麻を購入していたのか不明だが、なんらかの流通ルートがあったのは確かである。しかし現在では大麻と思って購入しても、別のドラッグが混入されている事があり、その結果、死に至る事件も相次いでいる。出所が明らかでないドラッグを購入するのは、あまりにも危険といえるだろう。

友人のDは合法化を機に、数ヶ月前に大麻を購入した。彼はティーンエイジャーの頃は様々なドラッグを試した経験があるそうだが、二児の父になった今では嗜好品としての大麻使用には興味はない。Dは不安障害と持病の腰痛を抱えており、大麻が合法化された際に主治医から「通常の処方薬とは別に、大麻を使用するというオプションも可能になったが、試してみないか」と話があったのだそうだ。

ディスペンサリーでは様々な品種の大麻が用意されており、用途に応じて選ぶことができる。Dは口中スプレータイプの大麻を購入した。不眠によく効き、不安障害もうまく抑えられているという。

政府公認のディスペンサリーを利用するメリットは商品の安全性だが、唯一の問題は、政府の介入により税金が加算されるため高額なこと。Dによると、2−3週間分で100カナダドル(約8153円)程度するらしい。合法以前にやりとりされていた価格の倍に高騰しているそうだ。このままでは、安い闇ルートのドラッグに戻ってしまう人達がいるのでは、と懸念する声も聞かれる。大麻が合法化されて最初の年、今後の行方が気になるところだ。

(注)カナダでは大麻使用が合法化されたが、日本では大麻の所持等は違法とされているため、日本政府より邦人に対して注意勧告が出ている。注意してほしい。参考:在バンクーバー日本国領事館のサイト

ピアレスゆかり/プロフィール
カナダ在住ライター、コンサルタント。2018年から「はみだし系ライフの歩き方」ポッドキャストも配信中。現在100日毎日ブログを書くプロジェクトも実施中。