253号/原田慶子

平成から令和へ移行しようとする記念すべき時間を日本で過ごした後、平成最後の日にかの国を発ち、ペルーへの長旅を開始した。成田空港のカウンターでチェックイン。搭乗ゲートで時間を潰す間、特にやることもないので職員やCA(客室乗務員)の動きをぼんやりと眺めていた。

彼女たちを見ていると、とにかくマメによく動く。皆一様に背筋をピンと伸ばし、笑顔を絶やすことなく任務に対応する姿は統一感があり美しい。しかし、カウンターの内側に入る度に乗客のほうを振り返って一礼するのは、ともすれば無駄な動きに見えてしまう。それって必要なサービスだろうか。

搭乗の指示に従い、機内へ入った。座席へ向かう途中で耳にするのは、「……皆様のお荷物はご自身の手で、上の収納棚に収納してください」という機内アナウンス。あぁ、日本。こんな逆サービスは、恐らく日本のキャリアだけだろう。

10時間ほどのフライトを経て、ロサンゼルスへ到着。ここでいったん米国に入り、また出国と搭乗手続きをしてゲートへと向かう。

ここからはラテンアメリカの雄、ラタム航空を利用した。成田と同じように搭乗ゲートで時間を潰していると、ラタムのCAたちがぞろぞろ(ダラダラともいう)とやってくる。あるものはスタバのフラペチーノを手に、あるものはスナック菓子を食べながら、さながらピクニックにでも行くような気の抜けた雰囲気。もちろん乗客に頭を下げることはない。そんなことをするわけがない。

ようやく搭乗時間だ。前回と同じように機内へと入り、座席を探して、荷物を上の棚へと収納しよう……としたら、女性CAが「あら、手伝うわよ~」と自ら近寄ってきてくれた。うわーん、助かるー。私の身長だと、この作業は本当に一苦労なのよ。

その後も男性CAが「僕はホルヘ、何かあったらいつでも僕を呼んでね!」と声をかけてくれた。「日本からの乗り継ぎかい?僕はまだ日本に行ったことないんだ~」なんて会話を挟みながらの給仕は心地よく、降りる時も「じゃあね、気を付けて!」となんともフレンドリー。

機内設備も料理の内容も、日本のそれには遠く及ばないラテンのキャリア。でもあの大雑把さが何とも心地いい。頭なんか下げなくていいから、特別なサービスなんてなくていいから。もっと気楽に、肩の力を抜いていこうよ。杓子定規じゃなく臨機応変に、ね。

 

(ペルー・リマ在住 原田慶子)