252号/河野友見

平成が間も無く終わり、令和の時代が幕を開ける。昭和後期の生まれの私は、これまでの人生のほとんどを平成の時代と共に過ごした。平成元年は小学生だった私も、30年の間に大人になり、社会人になり、結婚をし、息子が生まれてその子は6歳になった。

 この30年間は、あっという間だったようにも思うし、いやとても長かったようにも思う。自分の人生と照らし合わせて、平成一桁の頃は中高生で部活に勤しみ、青春を謳歌していたな……とか、平成10年代は社会人になって無我夢中で働いたし、海外にあちこち旅をしたな……。平成20年代は結婚と子育ての時代だったな……など、振り返れば平成は自分の半生そのものだ。今月、息子は小学校に入学した。「平成最後の一年生」……いや、「令和元年の一年生」と言うべきか。息子の小さな手はついに私の手から離れ、ランドセルの肩ベルトを握りしめた。これからは親の付き添いなく、学校に通うのだ。平成が終わり、令和に突入するこのひとときは、ほんのちょっぴり、私が子離れを経験する時。私の中でも人生のターニングポイントになるのだろう。

 しかし、しみじみと平成を振り返っている間もなくトラブルは発生する。入学したての息子はどこでもらってきたのであろうか、季節外れのインフルエンザA型ウイルスを、学校のお友達よりも先に家に連れ帰ってきたのだ。入学して3日目にして家に閉じ籠り生活を強いられ、もれなく私自身も仕事をすべてキャンセルして、息子に付きっ切り。やれやれ、また春休みに逆戻りだなと独りごちてみるも、いや一人通学を始めたばかりの息子を心配する私に、平成最後の余韻に再度浸らせてもらっている機会なのかな、とも思い返した。

 幼稚園生活を含めた彼の人生の6年間、ずっとインフルエンザから逃げ切っていたのに、まさかの罹患。初めてインフルエンザにかかった息子は、普通の風邪との違いもよく分からず、「まだ学校に行けないの?」と足踏みをして通学許可を待っている。我が家からインフルエンザに出て行ってもらったら、いよいよ平成が終わることになりそうだ。

(広島在住・河野友見)