2:アフリカのトイレ体験/ケニア

アフリカのケニアで暮らしていた時のこと。地方出張に行くと、ぼっとんタイプのトイレしか選択肢がないということがよくあった。

このタイプのトイレ、なぜかどれも穴の幅が極端にせまく、その穴にぴたりと命中させ、横の壁にかすらせることなくスル―させるのが至難の技。そのコツは……コンニチハが始まったら、円を描くようにお尻をグル―ン♪と回し、落ちゆく方向を調整するのである。フープをしゃがみながら行うような感じと言えば分かりやすいだろうか。

何度か行っているうちに、この技を完全会得した当方、屋外トイレを目にしただけでお尻を回す衝動に駆られる始末。「ふふふ、アフリカの屋外トイレもマスターしたことだし、いよいよオレも本物だな!」そんなことを呟きながら調子にのっていた矢先のことである。かなり辺鄙な場所にある小学校を訪問した。ランチの後、急にトイレに行きたくなり、屋外トイレに案内されたのだが、それは初めてのドアがついていない前から丸見えのタイプ。そして辺りには珍しい外国人の訪問客に興味しんしんでついてきた子供たちが、わいわいがやがや大集合。ガ―ン……。

トイレに行きたいことを知っているのか知らないのか、子供たちは「チャイニーズ!ハロー」などと声をかけてくる。「頼む、お前ら、お願いだから、あっちへ行ってくれ!」しかし珍しい外国人を前に皆さん興奮気味、なかなか動こうとしない。切羽詰まった当方は既に顔面蒼白。「いかーん」と即座に子供たちの脇をくぐり抜け、遠くに見つけた草むらへ向かって猛ダッシュ!そこで用を足したのであった。

こんなアフリカでの屋外トイレ体験だが、時々妙に懐かしくなる。温水洗浄便座ばかり使っていると、用足しの本能というか原始的な感覚が鈍っていくような気がするのだ。
今度トイレに入ったら久々にお尻をグル―ン♪と回してみることにしようか。

片桐コジャック/プロフィール≫
ケニア人の妻と東京在住。日本で感じる海外+アフリカをテーマにブログ「マンボ・アフリカ」を発信中。先日自宅のトイレでお尻を回してみた。その衰えていない腰の動きに思わず一人でニヤリ笑い。トイレの鏡に映った自分のニヤケ顔と目があった瞬間、「一体自分は何をしているのだろう」と自己の人生に対する深ーい疑問のようなものが頭をよぎったが、すかさずジャーと流してサヨウナラをした。