フランス語ではCurriculum vitae,略してC.V.という。ラテン語で「人生の流れ」というような意味だ。

性別、年齢を記載するのが普通だが、写真や応募動機を説明する手紙は明記されているときだけ添付する。JIS規格履歴書のようなものはなく、書き方や内容は求める職種や会社に合わせる。

フランスにはグランゼコールと呼ばれる、エリートを養成する高等専門学校がある。フランス革命以前、国家の要職につくのは貴族、王族に限られていた。しかし革命によってこのようなシステムが崩壊すると、新しい国家を再建するため、とくに理工科系や軍隊のエリート人材が必要となった。その養成のために18世紀に創立されたのがグランゼコールで、卒業者は自分の履歴を華々しく記載し、引く手あまたで悠々と就職先を選ぶことができる。

しかし、実際にはそうではない人々が大多数で、新卒の70%が非正規雇用である。卒業してすぐは、スタージュという研修期間やアルバイトなど不安定な時期を平均3年は過ごし、やっと定職をみつけるというのが普通だそうだ。

たとえ、大学院まで進み修士号や博士号を取得しても、文科系ならばすぐに就職先はない。下手に文科系の教養を積んだことを履歴書上で表向きにしないほうが職にありつくには早道ということを聞いたことがある。「使いにくい人材」「高くつく人材」と思われ、敬遠されるそうだ。

文科系か理科系を決めるのは高校時代の最後だが、最近は、自分が好きな進路を選ぶというよりは、就職に有利な理科系に進みたがる生徒、いや、そう願う親が過半数だ。

「若者よ、好きなことをとことんやれ!」と言いたいところだが、30歳以下で失業中の若者が100万人以上、そのうち5人にひとりは貧困線以下の収入で生活というのが現状だ。人生を豊かにするために勉強するなどというのは、もう古いのだろう。

参照: 2011年2月9日付けル・モンド紙p.15

夏樹(なつき)/プロフィール
パリ在住フリーライター。15歳の息子もいるので、就職や進路はこれからの切実な問題。やりたいことをやらせてあげるか、あるいは無難に就職できるように導くか、二者択一は難しい。
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