1 バイクの免許が無いと困ります/台湾
市販の履歴書。小さいものはアルバイトの応募用で使います。

履歴書は、北京語で「履歴表(リーリービャオ)」といいます。

市販の紙のものもありますが、インターネットでフォーマットが用意されていて、そこに書き込んでいくものもあります。後者は、雇用者側も管理がしやすいなどのメリットもあり、今は積極的に採用される傾向にあります。

兵役義務の履行状況を記す欄。「未役」は未履行、「已役」は履行済み、「免役」は免除の意味です。

これらの履歴書を見ると、「台湾ならでは」と言えるのは、兵役義務の履行状況を記載する欄があることでしょう。時代を反映してか、1995年以降出生の男子の兵役免除が確定しましたが、将来的に兵役の義務制が撤廃され、志願制に移行した時、この欄はそのまま残るかどうか気になるところです。

でも、筆者が「台湾ならでは」と思うのは、バイクの免許証の有無を申告する欄があることです。

バイクが運転できるかどうかは、台湾では大変重要な意味を持ちます。台北市及び近郊の新北市の場合、交通機関が充実していますから、私自身さほど重要性を感じませんが、それ以外の地域では違ってきます。

台北市と新北市以外で「交通が充実している」と言えるのは、MRT(地下鉄)がある台湾第二の都市、高雄市。高雄市も、市街地から少しでも外れると、一気に陸の孤島化するところがあります。

それ以外の地域では、MRT(地下鉄)はありませんから、公共交通機関は実質バスのみ。ただ、バスも本当の意味で頼りにできるのは市街地だけの状態。そんな市街地でさえ本数は少なく、何十分待っても来なかった、ということはよくあります。

運転免許の状況を記す欄。上の「汽車駕照」は自動車の運転免許のことで、下の「機車駕照」はバイクの運転免許

そうなると、バイクのように小さくて機動力のある交通アイテムは欠かせません。バイクが無ければ、仕事どころか会社の出退勤すらできなくなります。タクシーを使うこともできなくはないのですが、毎回タクシーでは交通費の負担は相当なものになります。

環境保護が叫ばれる時代に、排気ガスをまき散らすバイクが合っているとは言い難いですが、履歴書の記載欄からは、「バイクに乗れないと、ウチは困るんだよね〜」という雇用者側の現実的な声が聞こえてくるような気がします。

小川聖市/プロフィ−ル

台湾・台北市在住。今までは、年数回台湾へ渡航し、その都度原稿をまとめてきたが、昨夏に移住を決意。野球だけでなく、視野を広げて幅広く今の台湾の事を紹介できれば、と奮闘中。現在は主に下記URLでリポーターとして執筆中。http://www.ima-earth.com/index.php。各種問い合わせはこちらまでお願いします。