アメリカの履歴書は自由形式とは言いながらも、実は細やかな決まりごとがあり、書式はもちろん、紙やフォントの選び方からも応募人のセンスが判断されてきた。インターネットの普及により、現代では履歴書をメールで送信することが多く、アイボリー色に透かしが入った上質紙を奮発する機会は減ったが、書式に関してインターネットで事前にリサーチするのが常識となっている。

一般にアメリカの履歴書は、応募人の名前と連絡先から始まる。年齢、性別、未婚既婚、家族構成、写真などは一切必要がなく、この国における雇用機会の平等性が表れている。冒頭には目的を明確に、例えば「企画部長の職に就くこと」など、ストレートに希望する職名を宣言する。次には「10年に亘る企画課長の経験」「業界賞受賞」などの功績を用いて簡潔に自己をPRし、それを裏付ける職歴、学歴を、現在から過去にさかのぼる順序で述べる。希望する職に関連する職歴については具体的に、そうでない職歴は省いても良い。自分がその職にいかに適した人材であるか、自分を雇うことでどれだけ雇用主のプラスになるか、について実績を用いて論理的にまとめたものがアメリカ式履歴書である。日本では就職に有利とされている種々の資格や検定も、仕事に直結したもの以外は得点には結びつかない。唯一コンピューター・ソフトウェアについては、リストアップするほどプラスの傾向が見られる。

失業率がアメリカ全体では10%、ハワイ州では6%という現在、職務経験の浅い大学新卒者にとって就職は厳しい現実である。しかし履歴書作成は、最終判断となる面接での応答に必ず役に立つ。自己の経験とスキルが希望職種に合致しているかどうか、論理的な履歴書作成の段階で明らかになってくるからだ。実力社会で常に実践力が問われるアメリカでは、コネよりも、説得力のある履歴書が採用への第一歩であることは間違いない。

澄水ゆかし(すみすゆかし)/プロフィール
米国ハワイ州カイルア在住。現職州公務員の書類審査では3ページほどの質問書への答えと転職を重ねて職歴欄を充実させた履歴書が功を奏したと思われる。米国では希少価値である安定性、退職後の保障のためにこつこつと、本業とフリーランスライター、家庭と趣味のパドリング、DIYをバランス良く保つことを心がけています。