第4回 末っ子の進学問題で悩む

我が家の末っ子は10歳、5年生だ。息子が現在通っている学校は公立校で、一般的には7年生までが小学校。8年生になると、12年生まで学ぶセカンダリースクールに進学する。しかし、新学年が始まる次の9月からの学校をどうするか、悩んでいる。そのまま最寄りの小学校に残る以外に、市内の別の地域にある、公立のフレンチイマージョンのあるミドルスクール(中学校)に進学するという選択肢もあるためだ。

フレンチイマージョンは、イマージョンプログラムのひとつで、カナダで1960年代に始まったと言われている。イマージョンは教育用語では没入法と呼ばれるそうだが、私の感覚ではプチ留学だ。カナダは英仏二カ国が公用語ではあるが、バンクーバー周辺は英語圏で、フランス語とのバイリンガルの人は少ない。フレンチイマージョンでは、学校にいる間、フランス語で数学や理科、社会など他教科を学んで、フランス語のシャワーを浴びることで二ヶ国語を習得できるようにする。

実際、集中的にフランス語で授業を受けることで、半年も経つとフランス語をかなり理解できるようになるようだ。現在7年生の娘は6年生から、このフレンチイマージョンのプログラムに入った。家庭でフランス語を披露することはないが、同じくフレンチイマージョンの学校に通っていた、「とりあえず英仏バイリンガル」の夫によると、既に娘にフランス語の文法を直されることもあるらしい。

娘がフレンチイマージョンに進学したのは、本人が希望したためだ。外国語を学ぶ方法として、私もイマージョン教育には興味があったが、日本人の母として、プライオリティは日本語だ。

我が家の子ども達は一番上の息子を除いては、残念ながら日本語をほとんど話すことができない。娘のときは「日本語もしゃべれないのに、フランス語?」と躊躇はあったものの、本人が勉強したいというので入学させた。

一方、末っ子は今の小学校から移りたくないと言っている。フランス語には興味がない。末っ子は、3人の子ども達の中でも話し出すのが一番遅かった。2年生のときには、英語の発音に問題があると担任からの指摘があって、週一回スピーチセラピストにもついた。日本語どころか、カナダで暮らす上で最も大切な英語にも常に不安を持ってきた。

そのため、末っ子に関してはフレンチイマージョンなんて論外、とんでもないと思ってきた。悩み始めたのは、上の息子がフランス語でつまずくのを見たからだ。幸いにも彼には日本語があったので、セカンダリースクールでの外国語は日本語を選択してクリアした。(注)しかし、末っ子は日本語も心もとないのだ。

娘や娘の友達を見ているかぎりでは、とりあえずイマージョンで勉強すると、フランス語力はつくようだ。今はまだ外国語の比重は低いが、今後、外国語で苦労するかもしれないと考えると、イマージョンで学ぶのは悪いことではないかもしれない。

もうひとつ考え込んでいるのは、イマージョンのある学校のカリキュラムの豊富さだ。同じ公立校であるものの、規模の大きい学校であるためだろうか、主要科目以外の内容が充実しているのだ。

英語への不安や本人の希望もあるので、おそらくフレンチイマージョンの学校には入れないと思う。それでも、一応、入学申込みだけして、あとしばらく悩むことにした。

(注)カナダではセカンダリースクールの外国語は、学校によって異なるが、フランス語以外にもスペイン語、日本語、ドイツ語、北京語、パンジャーブ語などから選択することができる。

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カナダの名産品のひとつ、メープルシロップ。ただし、東部のケベック州やオンタリオ州で生産されている。オタワに住む義母がお土産に採れたてのメープルシロップを持ってきてくれたので、スコーンを焼いた。

レシピ

メープルシロップとレーズンのスコーン

材料

  • 小麦粉1 3/4カップ
  • 砂糖 1/3カップ
  • ベーキングパウダー 小さじ2 1/2
  • 塩 小さじ 1/4
  • バター 大さじ6
  • レーズン 1カップ
  • 牛乳 1/4カップ
  • 卵1個
  • メープルシロップ 小さじ1 1/2

1カップ=250cc

1.      すべての粉類をボールに入れて混ぜる。

2.      バターをパイカッターやフードプロセッサーで1の粉類にポロポロになるように混ぜ込む。

3.      レーズンを2に加える。

4.      卵、牛乳、メープルシロップを良く混ぜて、3に加えて、生地をまとめる。

5.      打ち粉をした上に生地をのせて、麺棒で2.5センチ程度の厚みの円盤状にする。

6.      大きさは好みで6個から8個に切り分けて、190℃のオーブンで15分から20分焼く。

《ふじき・みきこ》

バンクーバー在住のフリーランスライター。バンクーバーは秋から冬にかけて雨が多い。お日様にお目にかかることが少なく、気が滅入りがちだが、庭のプリムラやクロッカスが咲き、チューリップやヒヤシンスの葉も出てきた。春が近づいてきている。