第2回 現代のポーランド魔女裁判/ポーランド

魔女裁判が過去のものだと思ったら大間違いのポーランド。大都市クラクフ郊外で2003年に魔女(魔男)の嫌疑をかけられた男性がいました。それに伴い、裁判も執り行われたというのです。

この男性イェジィ氏に、何故魔女(魔男)嫌疑がかかったのかといいますと、隣人であるアンナさんが「彼から牛を買ったその日から悪いことばかりおきる。彼が魔術をかけたに違いない」とあちらこちらで言いふらしたのが原因だそうです。どんな悪いことがアンナさんに起きたのかと思えば、彼女の牛の乳の出が悪くなり、鶏が卵を産まなくなったと……。そ、それだけ?と聞き返してしまいそうになりますが、それが彼女には立派な理由だそうです。

ババ・ヤガという名で有名なポーランドの魔女人形

ポーランドの多くの地域では、牛が乳を出さないのは“魔女(魔男)に魔術をかけられたため”という昔からの迷信があり、お年寄りの中には信じている人がまだ少なからずいるようです。現に、噂を信じたであろう近所の人の中には、イェジィ氏をあからさまに避けている人もいたというからたまりません。

15世紀から17世紀にかけてのヨーロッパでは魔女裁判の嵐が吹き荒れ、当時は嫌疑を受けようものなら拷問まがいの取調べの後、名ばかりの裁判を経て処刑となっていたのですが時代の変化というものでしょうか、なんと21世紀では嫌疑をかけられたイェジィ氏が裁判を起こしました。魔女裁判の歴史の中でもなかなか画期的な出来事です。

イェジィ氏は「術は信じていないけれど、あんな噂を近所で立てられたら住みにくい」いうことで訴訟を起こしたそうです。確かにそんな噂が立ったら、生活しづらいこと、この上なしでしょうか。

この裁判、最終的には和解という形で決着しました。しかし21世紀に牛の乳の出具合で魔女の嫌疑がかかる…乳牛を所有する家の近所に住むにはとてつもない勇気がいるようです。

情報ソース:ポーランド日刊紙ネット版のガゼタ<クラクフ版>より


ソルネク流 由樹/プロフィール

ポーランドの森を犬と一緒に毎日うねり歩くのが好きなフリーライター。最近は小学生である子供たちの食、健康への関心が更に高まり、エコ製品やオーガニック製品を試し続けている。また、ポーランドや他の中東欧諸国のパワースポットや占い、魔術にも興味があり、現在フィールドワーク中。