外国語教育熱が高いことで知られる韓国。特に英語は、就職の際にも英語能力試験の得点が問われるなど、必要性が高まっている。採択は見送られたが、小学校から英語での教科教育が検討されるなど、今後は英語能力の必要性がより高くなりそうだ。子どもを持つ親たちは自分の子どもには英語で苦労させたくないと、小さな頃から英語教育に時間とお金をかける。
いわゆるインターナショナルスクールは韓国籍の子どもを受け入れていないため、韓国籍の子供向けのインターナショナルスクールが大人気だ。保育園であれば、韓英バイリンガルの担任に英語ネイティブの副担任がつき、教室では基本的に英語を使う。ソウルで娘をこの手の“英語保育園”に通わせたが、通い始めて数日で持って帰ってきた“宿題”を見て唖然。そこに並ぶのは、astronaut(宇宙飛行士)、Mars(火星)、space(宇宙)など、およそ日常生活には関連しない言葉の数々。18ヶ月から30ヶ月のオムツも取れていない子どもが在籍するクラスに出された宿題とはとても思えない。
あとになって分かったのだが、このあまりにも現状レベルと掛け離れた授業内容は、親の意向を反映したものだったのだ。この保育園の月謝は、2010年当時で130万ウォン(現在のレートで9万6,000円)と、一般的な保育園の軽く倍以上。お金をかけて 通わせているのだから、しっかり教育してちょうだいよ、というのが親の思い。保育園側も「これだけ熱心にやっています」ということをアピールしないと、孟母三遷を地で行く韓国人父兄は転校だって厭わないのだ。とはいえ、毎日喜んで通う娘の様子をみる限り、詰め込み教育というわけでもなさそうだった。
この韓国人向けインターナショナルスクールには、もちろん幼稚園も小中学校もある。学年が上がるにつれ月謝も上がり、さらにピアノにスポーツ、英語塾と放課後の習い事にもお金がかかる。
最近では、英語ができるのは当たり前、人と差をつけるためには中国語! らしい。いやはや、韓国の親は大変だ。
≪御供理恵(みともりえ)/プロフィール≫
韓国には、2008年~2010年の2年間、ノルウェー人の夫と2007年生まれの娘、2009年にソウルで生まれた息子とともに在住。2歳になった娘を保育園に通わせ、韓国語、テコンドー、ポジャギと、片っ端から手を出すも、どれも形にならぬまま再び転勤を迎えてしまった。現在はノルウェー・アルタ在住。白夜と北極圏の町で、ライター業の他、翻訳、ツアーガイド、日本語教師と何足ものわらじを履いたムカデ状態。http://www.arcticrainbow.com/