第7回 チェー ― chè ― ベトナム
チェー ― chè ― ベトナム

甘いモノなら年中無休でウェルカムな私。でも、料理はもちろん、甘いものもやっぱり季節によって食べたいものの傾向は変わって、暑い季節にはやっぱり南の国の味が恋しくなる。

アジアンスイーツの中でもお気に入りはベトナムの代表的なオヤツであるチェー。穀類、芋、豆などを甘く煮たものが主体で、本来は温かいものだったようだが、暑いベトナムでは冷たいものも好まれるように。ちょうど日本のぜんざいによく似ているが、バリエーションはぜんざいよりかなり幅広い。

豆は小豆のほか、緑豆、黒豆、いんげんなど、さまざま。芋はさつま芋のほか、タロ芋が使われることが多い。このほかトウモロコシや米、蓮の実なども使われる。ここまではぜんざいに近いが、使われる食材はさらにあって、バナナやマンゴー、ナツメ、龍眼などの果物、白玉に似ているけれど形は細長いお餅やタピオカなども……このあたりからグッと南国ムードが加速。

さらに南部では煮こむのときにココナッツミルクを使うものも多く、ゼリーやクラッシュアイスなどもトッピング。だんだん台湾などでよく食べられる具だくさんかき氷に近くなってくる。変わったところでは、昆布や白キクラゲ、キノコなど日本では甘味にはまず使わないものが入っているものもある。

これだけ食材が豊富な上、厳密なレシピはないので、作り手によって組み合わせも味付けもさまざまで、バリエーションは無限大。あれこれ食べ比べてみるのも楽しいかも。ベトナムでは屋台などでも食べられる庶民的な味だが、氷をつかったものには要注意。心配ならレストランなどで試してみて。

日本ではもちろん安心して食べられるけれど、バリエーションが少ないのが残念。写真のPHO NAMのチェーは、右手前が緑豆とサツマイモの冷たいチェー。左奥がもち米とタロイモをココナッツミルクで煮込んだ温かいチェー。いずれもヘルシーな材料とほんのりした甘味でちょうどいいボリューム、そして¥350というお財布にもやさしいお値段なので、デザートやオヤツにベトナム気分を楽しんで!

PHO NAM(フォー ナム)

≪凛 福子(りん ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。日本とアジアを中心に世界各地を、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。夏は毎年、世界各地から里帰りする仲間に会えるのが楽しみな季節。東京は例年よりかなり早めに梅雨入りしたものの、ほとんど雨が降らない空梅雨の様相……厳しい暑さになるという予報の、この夏の水不足が心配。