省エネルギーの第一歩は、自分の消費量を知ることから。ハノーファー電力公社では、顧客に無料で電力消費測定器を貸し出しています。測定器をコンセントに差し、そこに冷蔵庫や洗濯機などのプラグを差し込むだけ。さっそく試してみました。
ドイツでは各電気製品に、エネルギー消費についてラベルがついています。欧州連合の統一規格でAからGで表示されており、一目でわかるようになっています。例えば最近の冷蔵庫はB以下はほとんどなく、A+からA+++までが主流です。
測定器はシンプルで使いやすくその瞬間の消費量と、24時間の消費量が測れるようになっています。電力公社の職員によると、冷蔵庫のように開け閉めするものは平均値を取るため、24時間見て判断すべきとのこと。A+(0.75kWh)よりも2割以上非効率な場合は買い換えた方がよいそうです。もともとの性能が悪くなる上、古くなるとゴムパッキンが劣化して密閉性が低下するので、断熱が悪くなります。
結局私の冷蔵庫は24時間で1,323kWhでした。A+と比較して倍近い消費量で、ショック。A+++(0.41kWh)の3倍以上になります。ラジオは瞬間で3ワット、テレビは70ワットぐらいでした。テレビのスタンバイは16ワットで、電源を切ってもコンセントにつないでいるだけで2ワット消費しています。旅行の際などはコンセントから抜くべきだと実感。電気ポットは短い時間とはいえ1,800ワットですから、どおりで勢いよく沸くはずです。ラップトップは使っているときは35ワットぐらいですが、ふたを閉じていても24ワットなのには驚きました。長時間使わないときは切っておいた方がよいですね。
ハノーファー電力公社は1998年の電力市場自由化以前、1990年の初頭から省エネに力を入れてきました。年々増え行く電力消費に供給が追い浮つかず、昼間のピーク時に足りなくなると他社から高額で購入していましたが、そのコストを顧客に請求できるわけではありません。必ずしも電気を売れば売るほど、儲かるわけではない。しかし発電所を新設するリスクとコストは大きいため、人々に省エネを呼びかけ、需要を供給にあわせることにしたのです。省エネ相談にのったり、省エネランプを無料で配ったほか、市の一角にLED街灯モデル地区をつくったり、ゼロエネルギー住宅地の造成を支援するなどエコロジカルな取り組みに力を入れています。
電力消費は全体の消費量を見るのではなく、個々の家電製品で見るのがポイントです。それにより無駄が見つかります。省エネはいつでも誰でもできるし、発電量を減らすことにつながります。みんながテレビやオーディオのスタンバイをやめれば発電所を何基も停めることができるといいます。必要なことを我慢することはないのです。ただ不必要なことをやめるだけで、お財布にも環境にも寄与することができます。
≪田口理穂/プロフィール≫
ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。
記録式ダイエットというのがありますが、電力消費も記録するだけで減りそう。知ることが第一歩なのだと実感しました。ドイツ人が日本にきてまず驚くのが、ずらりと並んだ自動販売機。ドイツは部屋が薄暗く、夕食の灯りに好んでろうそくを使うお国柄。合理的で倹約家なので、自然に省エネにつながっている面があるような気がします。