ドイツのハノーファーといっても、みなさんご存知ない方が多いかもしれません。いまさらながら、環境政策とともにハノーファー市についてご紹介したいと思います。
ハノーファーはニーダーザクセン州の州都で、人口は52万人。旧西ドイツに位置し、北海に面しています。いわゆる中堅都市で、日本でいうと仙台市のような感じ。「森の中に街がある」といわれるほど緑豊かで、市北東部に位置するアイレンリーデの森は、パリのブローニュについでヨーロッパの都市の森として第二の広さを誇ります。西にはバロック式のヘレンハウゼン王宮庭園があり、市民憩いの場となっています。東西南北に走る鉄道の中間地点であり、市内には空港や劇場、大学、病院、映画館などなんでもそろっています。
ハノーファーはどちらかというと観光地ではなく、商業都市です。フォルクスワーゲンの工場やコンチネンタル本社があり、世界最大級の見本市会場もあります。このメッセ会場で2000年、世界万国博覧会が開かれました。もともとあった会場の建物と敷地を利用し、増築や改築、一部周囲の敷地を開発しただけで自然破壊もなく、環境エキスポといわれました。
ハノーファー市と周辺町村は2050年までに、CO2の排出量を1990年比で95%削減し、エネルギー消費量を半分にすることを目標に掲げています。ドイツ連邦環境省の「マスタープラン100%気候保護」の一環によるもの。このプロジェクトのコストは、約120万ユーロと見込まれていますが、そのうち8割を国が負担します。段階的にCO2を1990年比で2020年までに4割削減、そして市内の一般世帯すべてに自然エネルギーを供給することを目指しています。
目的達成には自治体と企業、市民の3者の協力が不可欠。そのため人々の環境意識を高めるのはもちろん、具体的な施策が必要です。例えば公共施設の断熱工事がそのひとつ。52の小学校のうち25校を、エネルギー効率のよい建物に改装しました。冬の厳しいドイツでは暖房コストが高いのですが、断熱工事により最大8割まで暖房費を節約できるとあって積極的に取り組んでいます。また一般世帯や企業の省エネ指導をしたり、断熱工事に補助金を出しています。
では続きは次回に。日本では環境といえばフライブルクばかり有名ですが、他都市でも多かれ少なかれ取りくんでいます。無名なハノーファーの、先進的なエコの取り組みを知っていただければと願っています。
≪田口理穂/プロフィール≫
昨年出版した「市民がつくった電力会社 ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命」(大月書店)にちなんで先日、「自然エネルギー革命をはじめよう」の著者・高橋真樹さんと東京の信愛書店で対談をしました。初日のゲストは藤野電力の鈴木俊太郎さん、二日目のゲストはロック歌手の佐藤タイジさんでした。タイジさんは武道館でソーラーエネルギーを使ってコンサートをした方。東日本大震災にさいし、原発についてはもちろん「人類が作ってきた制度の疲労が出ている。どうやって自分たちを幸せにしていくのか考えなければ」と民主主義にも言及。とても刺激的な2日間でした。対談については、姉妹店である高円寺書林のサイトをご覧ください。http://kouenjishorin.jugem.jp/?eid=2115