第10回  タピオカミルクティー ― 珍珠奶茶(ヂェンヂューナイチャー) ― 台湾

タピオカミルクティー ― 珍珠奶茶(ヂェンヂューナイチャー) ― 台湾

もう10年くらい前になるだろうか? 台湾のチェーン店っぽい雰囲気のコーヒースタンドで、人気上昇中だからと、とあるドリンクをすすめられた。アイスミルクティーの入ったプラスチックのカップにぶっといストローが刺さっていて、底のほうには黒くて丸いぷにょぷにょしたものが……初めて出会ったその飲み物は、まずビジュアル的にかなり異質!中に入っているのはブラックタピオカだと聞かされたものの「私の知ってるタピオカと違う!」と心の声。タピオカといえば、もっと小さな白っぽい半透明のツブツブのものだと思っていたから。

さらに衝撃だったのは、そのぶっといストローを吸うと、甘いミルクティーと一緒に、黒いぷにょぷにょがポポポポポンッと口の中に飛び込んでくるのだ。ちょっとびっくりしつつ、もぐもぐしてみると、その食感は見た目以上にコシが強くてもちもちの歯ごたえ。ほんのり黒糖の香りがして……ん、これはクセになりそう! とすっかり気に入ってしまった。

そのキュッキュッとした食感から現地ではQQミルクティーとか大きなタピオカが入っていることからパールミルクティーとか呼ばれることもあるこのドリンクはその後、日本にも上陸。今やすっかり知られるアジアンスイーツのひとつとなったが、実は大きなタピオカをおいしく仕上げるのはけっこうむずかしい。中華街の屋台などで買っても、芯が残っていたり、ゆですぎたり、作り置きがながかったりしたせいかぶよぶよだったりして、かなりがっかりすることも少なくない。

台湾では日本円にして1杯¥100~¥200で、町中のちょっとしたスタンドやチェーン店で買ってもそうそうハズレることはないのに、こちらではずっと小さいカップで¥200以上払ってもアタリではなかったりするのにりて、めったに買うこともなくなってしまった。

そこに入ってきたのは台湾でタピオカミルクティー発祥の店と言われる春水堂が満を持して東京に初出店! というニュース。それも、1号店の六本木店ができてからすぐにたてつづけに代官山、表参道といずれもオシャレなエリアに2店の展開。これは行ってみなければ……と足を運んだのは代官山店。

はやりのコーヒーチェーン店等と同じく、レジで注文。その時は混んでいなかったからか、席には運んでくれたが、食器は自分で下げるというセルフ式ながら、店内は内装もシンプルかつおしゃれな落ち着いた空間。期待してオーダーしたタピオカミルクティーは、やさしい甘さのミルクティーと少し小さめでストローで吸いやすい、そして程よい食感においしく仕上げられたブラックタピオカが絶妙のバランスの1杯!

まだタピオカミルクティーを飲んだことがない人も、私のようにがっかりした経験をお持ちの人もきっと満足できるはず。これからの暑い季節、ちょっと小腹の空いたときにピッタリの絶品タピオカミルクティーをぜひ!

春水堂 -チュンスイタン-

凛 福子(りん ふくこ)/プロフィール
東京在住。日本とアジアを中心に世界各地を、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。春が短くて、もう初夏のような気候の東京ながら、今年は冷夏かも……との長期予報も。その前に、梅雨があると思うと少々気が重くなるけど、1年のうちほんのわずかな間のこの快適な気候を楽しんでます。