旅に出るとき、心は踊る。どんな風景に出会えるのか、どんな体験ができるのか、ワクワクドキドキしながら荷物をまとめ、出発する。
飛行機で飛んだり、列車や車で走ったり、目的地までの移動手段をも含めて楽しむ。そんな非日常の時間を過ごせることが旅の醍醐味だ。今回の連載では、旅の道中、移動手段を通して感じた驚きや発見にフォーカスを当て、旅の楽しさを伝えたいと思う。
さて、私が第二の故郷と呼ぶイギリスは、世界に先駆けて鉄道を走らせた国だ。蒸気機関車の歴史はイギリスで始まったと言っていいだろう。そんなイギリスだけあって、旅をするなら鉄道がおすすめ! 利用方法も難しくないし、レイルパスがあればどこでも乗り降り可能で、切符を都度買う必要がないので便利だ。車窓からの景色は、牛や羊が草をはむ牧草地、紺碧の大西洋、中世の町並み、木々でできた緑のトンネル、そして大小さまざまに点在する湖。目の前を過ぎゆく風景はどこまでも続くパノラマ写真のようで、瞬きする間が惜しいほどこちらを魅了する。
イギリスの路線地図を見ていると、ここに行きたい、この路線に乗ってみたい、などと頭の中はすぐに旅に出てしまう。イギリスの鉄道旅行、どこに行くのかはもちろん人それぞれだが、ファンタジーというテーマを引っさげて列車に乗れば、その旅はますますスペシャルなものになること間違いない。ピーターラビットの湖水地方、クマのプーさんのアッシュダウン・フォレスト、不思議の国のアリスのオックスフォード……イギリスにはたくさんの物語が溢れている。その物語の舞台やシーンを頭に思い描きながら列車に乗れば、列車は夢を載せて走り出すのだ。
実は、そんな旅をこの度一冊の本にまとめた。初めて執筆した本が、大好きなイギリスの物語巡礼の旅。本当に光栄だし、幸せなことだと思う。この本が少しでも多くの人の手に取られ、鉄道旅行の楽しさやイギリスの魅力に気づいてもらえたら嬉しい。著書『イギリス鉄道でめぐるファンタジーの旅』は、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)より紀行ガイドシリーズKan Kan Tripの第8弾として2014年7月15日に発売となったばかり。是非、ページをめくって、鉄道で旅するファンタジーの世界を感じてみてほしい。
≪河野友見(こうの ゆみ)/プロフィール≫
広島市出身。ネタを求めて渡り鳥のようにあちこち飛び回る傾向がある。好物は中世・文学・ビール・アート・ユニオンジャック。2014年7月15日、初の著書『イギリス鉄道でめぐるファンタジーの旅』(書肆侃侃房(しょしかんかんぼう))を上梓しました。本が出来上がって思い出すことは、イギリス現地の美しい風景……ではなく、0歳児だった息子を抱っこしたりあやしたりしながら必死に原稿と格闘していた自分自身でした。あんな日もこんな日も、今となってはいい思い出です。本はとても素敵に仕上がりましたので、どうぞよろしくお願いします!