200号/プラド夏樹

第二次世界大戦来、地球上の移民数が初めて5,000万人を越えたそうだ。今、なんと5,120万人。そのなかには、「海外在住メディア広場」に登録している私たちの数も含まれているはずだ。

戦争がなく、社会保障が整ったEU諸国をめざし、ボートに鈴なりになって、またはトラックのコンテナーのなかに隠れ、ときには中東から徒歩でやってくる移民は多い。2014年、いちばん多かったのは内戦が続くシリア、貧困にあえぐエリトリアをはじめとするサハラ砂漠以南のアフリカからの人々だ。

残念なことに、私が暮らしているフランス、その他オランダやイギリスでも、移民を諸悪の根源とする極右翼党に投票する人の数は年々増えている。そして、みんなが夢みる福祉国家スウェーデンでさえ、2010年には5.7%しか集めなかった極右翼党が、この9月の国会議員選挙で12.9%を得た。ちなみにシリアからの内戦難民をいちばん多く受け入れているのはスウェーデンだ。

イタリアの国務大臣は「2011年、62,000人のアフリカ人がEU諸国に海路で密入国した」と言って、アフリカ人移民の増加がどれだけ社会問題かを強調した。しかし、1824年から1924年の100年間で、総数5,200万人のヨーロッパ人が、仕事とより暮らしやすい生活を求めて生地を離れて移民したそうだ。年に約50万人の計算になるが、それに比べたら、今、EU諸国にやって来るアフリカ人の数などたいしたものではない。

今回200号を迎えた地球丸は、今年で10歳だ。今も移民である、また、以前、移民した経験をもつ人々の視点で書かれる媒体としては日本で唯一ではないだろうか? 異文化との出会いを、摩擦としてではなく、エネルギーに変えていくきっかけになれればいいと思う。

(フランス・パリ/プラド夏樹)