167号/田中ティナ

フリースタイルスキー(モーグルなど)の国際ジャッジを務める関係で、ソルトレイクオリンピック10周年を迎えた今年、モーグル競技の舞台となったディアバレーのゴールエリアで、「これぞフリースタイルファミリー!」と、思わず口にしたくなる光景に出会った。

女子はオーストラリアの17歳、男子はノルウェーから21歳の若手が強敵をおしのけて表彰台3位を獲得。はじめての栄誉に戸惑うような、そしてはにかむような笑顔が初々しい。時には技術やルールについて激論を戦わせることもある各国コーチや監督も、まるで自分たちのことのように満面の笑顔で祝福しあっている。たとえ自国の選手が良い結果が出せなかったとしてもふてくされずに競技仲間をたたえる姿勢はとてもすがすがしく、「スポーツっていいな」と実感する瞬間だ。

アルペンスキーに比べたら競技人口も少なく一般的種目ではないからかもしれないけれど、フリースタイルのワールドカップサーキットでは強い国だけでは競技が成立しないこと、戦う仲間がいればこそ勝者があるということを、誰もが心のどこかで感じている。アプローチの方法は違っても‘Love of the sport’の思いがあるから、お互い尊重しあうし、意見が異なるからこそ発展があることを知っている。

こんなクールな人たちと現場を共有できることに、心から感謝している。

(スウェーデン、エステルスンド在住/田中ティナ)