9月、入学式の後に時間割をもらって驚いた。ほとんどの科目が「統合授業」としか書かれていなかったのだ。これではその日に学習するものが分からない、と思っていたら、教科書も全ての科目が統合された4冊組のものだけ。1冊目は“秋”、2冊目は“冬”というように季節ごとに分かれており、国語と算数を中心として、理科や社会に当たるテーマもうまく盛り込まれていた。
各科目の教科書を文部科学省から支給される日本とは異なり、ポーランドでは学校から貸し出される。といってもこのような制度になったのは娘が入学するほんの1年前のこと。それまでは各自購入しなければならなかったので、8月の終わりから9月にかけてあちこちの書店で、教科書リストを手に長い行列に並ぶ親子の姿が見られたものだ。しかし、子どもの多い家庭ではその負担が大きかったようで、システムが変えられることになったのだった。
日本の小学校と同じように、授業を行うのは主に担任の先生だが、週2時間ずつある宗教と英語は教科書も違い、先生も代わる。
“宗教”というのは、人口の90パーセント以上が信仰しているカトリックのこと。国教として定められているわけではないが、役所のような公の場所では室内に十字架が飾られているので、国民の日常生活に根付いていることがよく分かる。日本で赤ちゃんが生まれると神社へお宮参りに行くのに似て、ポーランドでは生後1年以内に洗礼を済ませることが多く、必然的に小学校に上がった時点でカトリックを信仰する子どもが多いことになる。宗教の授業は日本では道徳に当たるだろうか。するべきこととしてはいけないことの区別、助け合いの精神や動物愛護の心など、生活していく上で大切なことを学ぶ授業だ。少数派だが、別の宗教や無宗教の児童もいるため、“宗教”は必須科目ではなく“道徳(倫理)”との選択制になっている。
ポーランドに住むならカトリックのほうがこれから学校生活を送るのに楽だろうと、生後1か月で洗礼を受けた娘は“宗教”の授業を選択。こちらは学校からの貸し出しはなく、『わたしたちはイエス様の家族』というタイトルの教科書と練習帳のセットを購入した。「教科書を使って宗教を勉強する」というのはどういうものかと思っていたが、教会の中の様子がイラスト付きで紹介されていたり、覚えるべき祈りの言葉がレッスン毎に掲載されているほか、挨拶や礼儀のことなど、日本の道徳で習うような話も書かれていた。クリスマスや復活祭といった宗教関連の行事について説明されている章も見受けられた。
宗教の先生は、学校近くの教会で奉仕されている修道女、シスター・ヨアンナ。とても優しそうな方で、子どもたちにも好かれている。日本から帰国後再会したとき、「帰ってきたの?!」といって嬉しそうに娘を抱きしめてくれたのが印象的だった。授業ではお祈りのほかにも、宗教関連のアニメ番組を見たり、一緒に歌を歌ったりするのだとか。復活祭の前には学校の代わりに全校生徒で3日間教会へ行く日があり、実にカトリックの国らしいと感じられた。
英語の授業はどうだろうか。日本でも導入され始めている小学校の英語教育。ポーランドでは1年生からどのように英語を学ぶのか、個人的に興味があった。
使用する教科書は『Bugs World(虫の世界)』。そのタイトル通り、アオムシのコリンやアリのアニー、そのほかチョウにテントウムシといった子どもたちが好きそうな虫が登場して、歌や遊びも交えながら楽しく勉強するというもの。前々回にも触れたが、ポーランド語のアルファベットは英語のそれに数文字加えただけなので、国語の授業で読み書きを習ってからは、英語でも同じように読み書きの練習が始まった。文字が全く異なる日本人から比べたら覚えるのも楽だろうと思いながら様子を見ていると、同じアルファベットを使用するからこその弊害があることに気がついた。英語のスペルを見ても、ポーランド語風に読んでしまうのだ! 外国語を学ぶには、どこの国でもそれなりに苦労があるということなのだろう。
娘の通う学校では、4年生からさらにドイツ語が外国語科目として加わるという。娘にとって4つ目となる言語を学習することが、負担になってしまわないか今から心配だが、私自身以前からドイツ語を学びたいと思っていたので、この機会に娘と一緒に一から勉強できることを心待ちにしている。
≪スプリスガルト友美/プロフィール≫
ポーランド在住ライター。6月下旬、日本の子どもたちよりも1か月早く夏休みに入った。こちらの夏休みは、宿題もなければ登校日もプールの日もない。私が子どもの頃は、風の噂に聞いていたそんな「外国の夏休み」がうらやましかったが、親の立場から見ると、毎日をムダに過ごさないように1日のプランを立てるのが大変だ。ブログ「poziomkaとポーランドの人々」