229号/原田慶子

この春の一時帰国中に、山形と岩手を訪れた。
人生初の東北旅行を叶えてくれたのは、JRのジャパンレールパスだ。

今回の旅では、まず山形の食の豊かさに驚いた。
山形が誇るブランド米「つや姫」の香りと甘みを楽しみながら、尾花沢牛のとろけるサシに舌鼓。海山の幸と地酒に酔いしれた後は、滋味溢れる芋煮で身体の芯まで温まり、ひっぱりうどんで山形のサバ缶文化にも触れた。「山形といえばさくらんぼだけど、夏のスイカはそりゃあ美味しいですよ。またぜひその頃にいらっしゃい」と言った宿のおじさんの、あの自信たっぷりの笑顔が忘れられない。

岩手では人の温かさが心に染みた。

観光センターの女性、宿のお兄さん、レストランのウエイトレス、誰もがとても優しかった。人々が総じて心穏やかな秘密は、平泉が「お浄土の街」だからだろうか。また、民話の里・遠野の方々も皆親切だった。特に老人や障害者向けのサービスが充実しており、観光地では電気カートの貸し出しがあった。バスの運転手は帰路のバス停の位置や到着時刻まで丁寧に教えてくれた。さすがはカッパや座敷わらしなどの妖怪たちと共存する里、弱者へのいたわりや他者を受け入れる懐の深さは相当なものだ。

昨年11月、JRはジャパンレールパスの在外邦人向け販売を中止すると発表。しかし世界各国からのクレームや嘆願書を受け、「不公平な現在の利用者規定を改定」し、引き続きパスの利用を可能にすると改めた。外国人と在外永住者の線引きはさておくとして、「旅の便宜を図ることで日本文化に触れてもらう」のがパス本来の目的ならば、私は今回それをしっかり全うしたと思うがどうだろう。日本の旅を満喫し、東北の文化を学び、お金もしっかり落としたつもりだが。

5月に発表されるという新しい規定の内容が気になるところだが、ともあれ今回はとても良い体験ができた。JRさん、本当にどうもありがとう。これからも日本を代表する鉄道会社として、世界に恥じない懐の深さを示し続けて頂きたいと心から願っております。

(ペルー・リマ在住 原田慶子)