265号/田中ティナ

他のヨーロッパ諸国に比べればより緩やかではあるが、スウェーデン政府は新型コロナ感染症対応として手洗い、ひととの距離、70歳以上の方との接触を避ける、50名以上の集会禁止、不要な外出の自粛などを市民に呼びかけてきた。それを受け、我が家でも3月以降、自宅での自主隔離を続けている。

フリースタイルスキーの審判員をしている関係で5月、国際スキー連盟の会議のためタイへ飛ぶ予定だった。しかし遠方への移動がままならないため、会議はすべてリモート開催となった。直接、顔をあわせての議論とまったく同じようにはいかないけれど、それでもなにがしかの結論を出すことはできている。時差はあるが世界あちこちから日本での会議へ参加することもできるし、さらには会議参加者の交通費、宿泊費、会議室費などもかからないなど、リモート技術の利点も実感中だ。

そして家での時間が増えたので、始めたのがバードウォッチング。例年、冬にだけ設置する小鳥のエサ入れにヒマワリの種を詰めこんで、車庫の壁に取り付けた棒につるしている。するとカラ系の小鳥たちが数種やって来る。スズメやキツツキ親子に加え、ときおりリスたちも屋根から壁をつたったり、地面をちょこちょこ走ってきては頬いっぱいに餌を詰め込む。引っ越して10年になる我が家の軒先には、はじめてツバメが巣をかけ、子育ての真っ最中だ。鳥たちの声に耳を澄ませ、名前を確かめながらの観察も、例年のように旅行を続けていたら経験できなかった。

先日、ノーベル財団は今年のノーベル賞晩餐会を中止すると発表した。授賞式は形を変えて行われるものの、国王陛下をはじめ受賞者や関係者など1000名以上が集う晩餐会をコロナ禍で開催することは困難と判断したようだ。このようにウイルスの影響は当分続きそうだが、リモートワークなど渦中で学んでいることを活かしながら、世界のみんなが安心して安全に暮らせる日が少しでも早く来ることを願っている。

(スウェーデン・エステルスンド在住/田中ティナ)