幾つになっても誕生日を迎えることは、おめでたいことであり、節目といえるだろう。ニュージーランドでは、年齢が20代を過ぎるあたりから、1歳きざみの誕生日もさることながら、10歳区切りの誕生日を盛大に祝うようになる。期待を胸に、陽気に新しい10年の始まりを迎えようというわけだ。60、70、80歳と年齢が上がっていくと、さらにパーティーは大きくなり、友人や親戚が遠方から集まるということも珍しくない。100歳の誕生日を迎えたあかつきには、英連邦に属するこの国らしく、エリザベス女王や総督からお祝いのメッセージが届くそうだ。
一気飲みで迎える21歳の誕生日
ニュージーランドで特に象徴的な誕生日といえば、21歳の誕生日。1970年まで「成年」になるのが21歳だったなごりで、現在も21歳になった時に大々的に祝う人が多い。
成年になると、責任は伴うものの、自分がどこに行って何をしてもよくなる、つまり「自由への『鍵』」を手に入れたのと同じという意味をこめて、「鍵」をモチーフにしたプレゼント、カードが贈られ、ケーキが用意される。先住民マオリも似たコンセプトを持つ。ドアを「大人への入り口」と考え、伝統的な家屋のドア上に設えられる横木を模し、美しい細工を施した木彫を代表的なプレゼントとしている。もっとも最近は、それも多様化していて、「鍵」や「ドアの横木」にこだわる人は減ってきている。
21歳を、「ヤーディー(ヤード・グラス)」での一気飲みで祝う人もいる。化学実験に使う丸底フラスコの首を長く、口を広くしたような形をしているビールグラスを使う。長さは1ヤード(約90センチ)あり、1.4リットルのビールが入る。もともとは英国のパブで行われるゲームのひとつだったそうだが、ニュージーランドでは21歳の誕生日の「儀式」となっている。
ヤーディーでの一気飲みは、私の甥っ子も21歳の誕生日で経験。ビールが入っているグラスはかなりの重さで立って飲まざるを得ない。ひとりで支えられず、友人らが手を貸す。そうすると自分のペースでグラスを傾けることができないので、かなりこぼすことになった。飲み終わると、はやし立てていた周囲の人々が皆で、「よくやった」とハグしたり、握手したり。甥っ子も無事に通過儀礼を終えた。
10代後半は大人? 子ども?
慣習上、大人になったことを祝うのは21歳だが、法的に「成年」と見なされるのは、現在18歳だ。18歳になると、投票権が与えられ、結婚できるようになる。お酒やタバコを自由に買い、賭け事をすることも許される。
18歳が成年なら、成年の「仮免」時期ともいえるのが16歳だ。結婚することも、お酒を個人宅で飲むこともできるようになるが、あくまで「保護者の承諾があれば」という条件がついてまわる。その一方で、大人への第一歩を踏み出す時期でもある。例えば、車の正式な運転免許取得に向けて3段階あるテストのうちの最初の2つを受けることができる。常勤職への就職、銃の所持免許の取得、自家用操縦士免許取得のための単独飛行訓練が許されるといった具合だ。
ニュージーランドならではのユニークな年齢規制もある。例えば、5歳で小学校入学が可能になる。6歳からが義務教育だが、5歳で入学する子どもが圧倒的に多い。また、留守番ができるようになるのは14歳から。幼少時から留守番させられるのが普通の日本人にとっては驚きだが、面倒を見る人なしに、14歳未満の子どもを家に置いていくことは違法だ。
日本での成人が20歳なのに、ニュージーランドでは18歳と早い。なのに、14歳まではお留守番禁止。ティーンエージャーを大人扱いしているのやら、子ども扱いをしているのやら。「所変われば品変わる」は、こんなところにも見られるのである。
《クローディアー真理/プロフィール》
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。雑誌、ウェブサイトを中心に、文化、子育て・教育、環境、ビジネスといった分野で執筆活動を行う。10歳きざみの誕生日には「サプライズ・パーティー」をすることもある。本人には秘密で、周囲の人たちだけで計画・実行し、当日驚かせるという趣向だ。私も去年、経験したが、子ども時代以来のくすぐったい気持ちにさせられた誕生日になった。