子どもたちにとって、誕生日といえばパーティーだ。友達を招待し、いつも食べられないものを食べたり、やりたいゲームやアクティビティをやったりと、特別なひとときを過ごす。子どもの数だけ誕生日パーティーの種類もあるものだが、ニュージーランドの幼児から小学生ぐらいが楽しむのはこんなパーティーが定番だ。
多い「ゲーム」派の一方で、「エンターテイナー」派も
まずは招待状を作り、渡すことから誕生日パーティーの準備は始まる。既成のカードを使う人あり、パソコンなどを使って手作りする人あり、とさまざまだ。子どもの好きなものをモチーフにすることが多い。パーティーの日時・場所に加え、パーティーテーマがある時は「お姫さま」「海賊」というようなテーマを書いておく。また、出欠を折り返し連絡してくれるように「RSVP(フランス語の『Répondez s’il vous plaît』の略で、『お返事お願いします』の意)」の一言も添える。
誕生日パーティー当日のオーソドックスな遊びは、親が率いて行うゲーム。小さなプレゼントを包装紙に包み、何層にも重ねたものを、皆で回し、音楽が止まった時に持っていた人が包みをひとつずつ開け、プレゼントを見つける「パス・ザ・パーセル」、目鼻の代わりにロバのしっぽを使う、こちら版福笑いの「ピン・ザ・テール・オブ・ザ・ドンキー」、「だるまさんがころんだ」の音楽版ともいえる「ミュージカル・スタッチュー」などが定番だ。
エンターテイナーを招くパーティーもあり、子どもが喜ぶのはもちろん、親も楽をさせてもらえるので人気がある。ピエロや妖精がやって来て、遊んでくれたり、マジシャンがマジックを見せてくれたりする。広めの庭があれば、ポニーを連れてきてもらい、皆で乗馬もできる。
自宅以外に会場を借りて開くこともある。プール、屋内大型遊戯場、トランポリンやウォールクライミングの専門施設、ローラースケート場など。思う存分アクティブに過ごせるところが多い。招待人数が多い時や、体を動かすことが好きな子にはうってつけだ。
甘いもの、脂っこいもの解禁の特別な日
おやつの時間はたいていパーティーの中盤にやってくる。普段は甘いものや脂肪分の多いものはご法度の子どもたちだが、誕生日は特別と、解禁にする家庭が多い。いろいろなフレーバーや形のグミ、カラフルな包み紙のチョコレート、ポテトチップスやスナック菓子、ソーセージ用の肉をペストリーで巻いたソーセージロール、型でくり抜き、バターを塗ったパンに色とりどりのスプリンクルを乗せたフェアリーブレッド、果物数種類とマシュマロを串に刺したフルーツ・ケバブと、子どものリクエストにこたえる。ケーキもふるまわれるが、パーティーフードでおなかがいっぱいで、食べられないなんて子もいる。
ゲームとして、人形を交代に棒で叩き、中に詰まったお菓子を出す、メキシコ生まれの「ピニャータ」や、空高く投げられたキャンディーやチョコレートなどを競って拾う「ロリースクランブル」も子どもたちは大好きだ。手に入れたお菓子を、パーティーの間にちょこちょこと食べ続けるので、別れ際に、「今夜は夕ご飯を作らなくてもいいかもね」と親同士冗談を言い合うことも珍しくない。
パーティーが終わると、「来てくれてありがとう。これからも友達でいようね」と、ひとりひとりに「ルートバッグ」が配られる。切り分けたケーキ、小さな文具、シール、棒つきのキャンデー、面白い形のチョコレートなど、安価なプレゼントが、気が利いた小袋に入っている。ここまでする必要はないと反対する親もいる、賛否両論ある習慣だ。今の親たちが子どもの時代にはなかったそうで、最近定着したらしい。
招待状からルートバッグまで、誕生日パーティーは結構な手間ひまとお金がかかるので、正直なところ親としてはちょっと大変だ。でも、年に一度のことだし、わが子も友達も楽しんでくれるしと頑張れるのだ。なので毎回パーティーが終わると、ほっと胸をなでおろす。と同時に、「来年はどんなパーティーになるのかな」なんて考える。
《クローディアー真理/プロフィール》
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。雑誌、ウェブサイトを中心に、文化、子育て・教育、環境、ビジネスといった分野で執筆活動を行う。年齢が上がるにつれ、子どもの誕生日パーティーは変化する。10代に突入すると、お泊り会の色合いが濃くなり、もっと上になると、パーティーやケーキは要らないなんて言われたりする。親としては寂しい限りだ。