親が付き添いとして、子どもの友達の誕生日会に行ってまず見せてもらうものといえば、ケーキだ。年に一度の大切なお祝い事ということで、母親が腕をふるうので力作ぞろい。子どもの幸福を願う親の思いが込められているのはいうまでもないが、裏では、お母さん同士のライバル心もちらちらと見え隠れする。なので、毎年誕生日ケーキ作りはちょっぴりプレッシャーがかかる。もちろん、自分の子どもが喜んでくれればそれでいいのだけど……。
形も違えば、デコレーションも違う
ニュージーランドの子どもの誕生日ケーキはさまざまな形で楽しい。人魚、車、動物、数字、イニシャルなど、好きなものやパーティーテーマに沿った形の型を選び、台になるスポンジを焼く。毎年同じになってはつまらないし、子どもの好みも変化する。型をいちいち買っていては、不経済なので、ベーカリーなどでレンタルしているものを利用する。保証金は20NZドル(約1,600円)取られるが、レンタル料自体は5NZドル(約390円)ととてもリーズナブル。ちゃんと借りた時と同じ状態で期日に返却すれば、保証金は戻ってくる。
台が焼き上がれば、次は飾りだ。日本では生クリームを塗ることが多いケーキだが、こちらはアイシングが主流。バタークリームアイシング、クリームチーズアイシング……と種類は豊富だが、どれにも共通するのはかなりの脂肪と砂糖が含まれていること。生クリームのケーキはほのかな甘みが魅力だが、アイシングは基本的には砂糖の塊なので、ただただ甘い。おまけに子どものケーキの場合、フードカラーリングではっきりした色がつけられる。メリハリがある分見た目はきれい。だが、「え~、これ食べて大丈夫?」と言いたくなる、どぎつい色のものもあって、ちょっと引いてしまう。
アイシングの扱いに慣れているお母さんのデコレーションは玄人はだし。手先が器用で、ケーキ上に飾る小さな花や人形などもアイシングでひとつひとつカラフルに細かく作る。生クリームを絞り袋に入れてのデコレーションとはまた違った立体感があって、生クリームのケーキで育った私はいつもうなってしまう。
大きなケーキを作る一方で、それとマッチしたカップケーキを別に用意する家庭もある。メインのケーキはロウソクを立て、子どもが吹き消すためのもので、カップケーキはパーティーの最後に、招待された子どもに配られる。大きい方のケーキを切るのが惜しいからなのかな、と思っていたが、そうではないらしい。カップケーキの方が持ち帰ってもらう際、扱いやすいから、という気配りから作るとのこと。それでなくても手間がかかる誕生日会なのに、念入りだなぁと感心する。
不器用な作りでも、愛情たっぷりが一番
日常的に自宅でマフィンやケーキなどを焼く家庭が多いので、誕生日ケーキも手作りが主流だ。母親が忙しくて都合がつかなかったり、ケーキ作りが苦手だったりする場合は注文することもできる。スーパーマーケットで出来合いのキャラクターつきケーキを約30NZドル(約2,300円)で買えるし、依頼すれば約50NZドル(約3,900円)で円形のケーキを焼いてもらえるが、凝ったデコレーションは望めない。
専門のケーキ屋さんも誕生日ケーキを作ってくれる。パーティーの人数や好みに合わせて注文する場合、大きさやデザインによるが、100NZドル(約7,800円)からといったところ。見た目も味もパーフェクトなものになるし、子どもの好みは反映されているしと、言うことはないのだが、私はちょっと物足りない気がする。多少見た目は不器用であっても、手作りに勝るものはないと思うからだ。プロのように材料や器具がきちんとそろっているわけではない分、ほかのもので代用するなど工夫を凝らす。一生懸命作った、お母さんの手作りケーキは世界にたったひとつ。誕生日の後も、子どもはもちろん、家族にとっても、大切な思い出になる。
《クローディアー真理/プロフィール》
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。雑誌、ウェブサイトを中心に、文化、子育て・教育、環境、ビジネスといった分野で執筆活動を行う。今年の娘の誕生日ケーキはあえて日本風ストロベリーショートケーキにしてみたところ、当地の子どもたちに好評だった。