1 2022年に脱原発を決定/ドイツ

原発で23%の電力をまかなっているドイツでは、福島原発の事故を受け、早期の脱原発を発表。2022年までに、現在稼動中の17基すべてを順次止めることを決定した。2050年に自然エネルギーで電力の8割をまかなうことを目標とし...
LINEで送る

原発で23%の電力をまかなっているドイツでは、福島原発の事故を受け、早期の脱原発を発表。2022年までに、現在稼動中の17基すべてを順次止めることを決定した。2050年に自然エネルギーで電力の8割をまかなうことを目標としている。

1万人が参加した、北ドイツのグローンデ原発でのデモ

ドイツはもともと2000年の社会民主党と緑の党の連立政権で2022年の脱原発を決定しており、再生可能エネルギーの高額での全量買取や省エネのため建物の改修に補助金を出すなど、法的整備を進めてきた。例えば、個人が自宅の屋根で作った太陽光発電の電気も、電力会社が全国統一価格で買い取るのである。買取価格は風力、水力、太陽光など分野別に決められており、数年から20年保証されている。作った電気は買い取ってもらい、自宅用には安い電気を電力会社から買って使用すると差額が収入になる。また壁や窓枠に断熱工事を施すと暖房や冷房費が節約できるが、その工事に国が補助金を出し、奨励している。

しかし昨秋、キリスト教民主同盟と自由民主党の現与党が平均12年の原子炉稼動延長を決定。ところが福島の事故後、全国で反原発デモが数万人単位で起こり、原発推進の両党は州議会議員で票を減らしたことから、政策転換を強いられた。産業経済界は反発しているが、国民の8割以上が脱原発に賛成しており、政府は国民世論を代弁した形だ。

ドイツ連邦放射線防護庁による原発と小児ガンについての調査結果が改めて注目を集めている。1980年から2003年にかけて原発16基の周辺を調べたもので、5キロ圏内に住む5歳未満の子どものガンや白血病が通常の倍以上との結果がでている。

1998年の電力自由化により、1000ほどある電力会社のどこからでも電気を購入することができるが、福島原発の事故を受けて、自然エネルギーのみを扱う4社が大幅に顧客を増やしている。原発による電気でなく自然エネルギーからの電気を買うのは、個人ができる脱原発の第一歩である。

福島の原発事故については、今もしばしばメディアで取り上げられている。チェルノブイリ原発事故により、ドイツでも牛乳や野菜をはじめ校庭で放射能が検出された恐ろしさをドイツ人は思い出し、反原発運動が活発になった。その分、日本国民の対応が冷静かつ、政府に対して従順に思える。このような深刻な事故が起きたのに、なぜ政府に脱原発を迫らないのか理解できない。反原発運動家の合言葉は「フクシマは警告する。すべての原発を止めよ」である。


田口理穂/プロフィール
日本で新聞記者を経て、1996年よりドイツ在住。州立ハノーファー大学で社会学修士号取得。ドイツの生活事情やエコ、労働問題、教育など「NPOごみ・環境ビジョン21
「婦人公論」「ウェブロンザWEBRONZA」「日経BP社・エコマム」など幅広く執筆。「地球の歩き方」のドイツ・ハノーファー特派員。エコツアーや教育視察のコーディネート及び通訳もしている。共著に「ニッポンの評判」(新潮新書)。